次の日のお昼休み、私は佳凪と一緒に昼食を食べていた。
周りの人たちはスマホをいじりながら黙々と食べて、時々笑い声など会話が聞こえてくる。
私たちはと言うと、いつもなら会話が弾むはずなのに沈黙だけが続いていた。
何か悪いことをしたということでもないのにどこか気まずい。なにかを話そうとしても言葉が上手く出てこなかった。
ただ時間だけが過ぎていく。
「愛野、最近元気がない気がするけどなにか悩んでる?」
「えっ」
丁度ふたり揃って食べ終えたタイミングで不意打ちを食らい、聞いてきた内容の理解が少し遅れる。
佳凪は私の方を真っ直ぐ思い切ったように、真剣でありながらも心配そうな表情をしていた。
ひょっとして、佳凪に心配をかけてしまうほど私は元気がないの。
「うんん......少し」
本当は少しではない。だけど、悩みをさらけ出すのが苦手で言葉として素直に伝えようとは思えなかった。
「そっか」
軽い言葉で流したりせずに、私に優しく寄り添うように相槌をくれる。それがなんだかとても嬉しい。
「佳凪は......その、高校を卒業した後のことを考えたりしてる?」
ここで自分の本当の気持ちを言えていたら良いのに言えなくて、代わりにもう一度改めて聞こうと思っていたことを伝える。
私は相変わらず偏屈というかどこか不器用だ。
「うん。今のところ両親がやっているお店の仕事をやっていこうかなって思ってる。でも、このことを伝えたらお父さんがね『無理にこのお店で働こうとか考えなくて良いから、自分の好きなことを学んだりするために大学へ行ったら』って言うの。進学をするにはお金がすごくかかるし、そこまでして行きたいとは思えなくて。だから、自分がしたいと望んだことをまっすぐにやっていきたいなって」
瞳に輝きが帯び、ふんわりとした笑顔を浮かべる。
彼女が言う言葉にはしっかりとした芯があった。揺らぎを一切感じない。私はいつもはっきりと物事を上手く言えなくて、佳凪はしっかりとできるからこそ尊敬してしまう部分だった。
「佳凪はやっぱりすごいね」
「そうかな。やりたいと思うのが偶然身近にあっただけで、好きだったりしなければ思い悩んでいたかもしれない」
「でも佳凪なら、なんやかんやですぐに見つけそうな感じがする」
「うんん......どうだろう。進路って難しいよね。誰だって悩んでしまうことだと思うし、悩まない方がきっと少ないことだからさ」



