――ついたのは、なぜか”星影海”だった。
砂浜に座り込んだ私を、波の音と冷たい風が、優しくなでる。
「…っ、う…」
自然とほほに涙が伝う。
もう、後戻りはできないとわかっていた。
……何時間そこに座っていただろう。
涙が乾いて出てこなくなったころ、私はフラフラと立ち上がって、”どこか”へ向かう。
エレベーターのボタンを押し、最上階へ。
―――あの時、ステラと出会った展望台。
『ねえっ、澪ちゃん。また来ようね、ステラに会いに!』
あの時がウソみたいに愛おしくて、懐かしい。
あの頃笑ってたちーちゃんは――もういない。
ゆらゆらと体が震えるのが分かる。
一歩、二歩、と私は展望台を囲う柵に近づいた。
「…ははは」
乾いた笑みが、唇の隙間から漏れた。
風が私の髪をなびかせる。
下を見れば、震えるほど地面が遠くて。
―――もう、いいかな。
ふっと目を閉じ、風に任せて体の力を抜いた、その瞬間だった。
「――危ないですよ。そこ、柵がボロいので」
「…えっ?」
聞いたことのない声が、耳に伝わって、思わず体が固まる。
ゆるりと振り返るとそこには――一匹の白猫……ステラがいて。
「ス、テラ…?」
「降りましょう。まだまだ夜は長いですよ。――澪さん」



