「おじちゃん、イチゴクレープ二つ!」
「あいよー。いつもありがとね、嬢ちゃん。ほれ、おまけの飴!」
「わーい!」
ちーちゃん家の近くで販売してるクレープ屋台でクレープを買い、二人でブラブラと近くの海を散歩する。
「ねえここの海ってさ、”星影海(ほしかげかい)”っていうんでしょ」
「あー…そうだっけ?」
「なんでもさ、あそこの展望台で三回願い事したら叶うってウワサ!」
「ふーん」
興味ない、というようにクレープを頬張る澪に、千紗は少し怒り顔。
「ねえ澪ちゃん、ちょっとくらい話聞いてよぉ」
「聞いてるよ。けど、実際に願い事したって叶うわけないじゃん」
「なんで?」
「なんでって……。そんなファンタジーなウワサ、誰かが勝手に想像して流したに決まってるでしょ?」
澪がはっきりとそう言い切ると、「夢がないなあ」とあきれた顔をする千紗。
「ねえ、言ってみようよ。やるだけやってみよう?」
「えー…。でもあそこ、すっごい高いじゃん。ちょっと怖いよ」
「そうだけど!でもそんな弱気じゃ、今年の修学旅行いけないよ?」
「修学旅行って十二月とかの話でしょ。今はまだ四月だもん」

「いいから!ほら、行こうっ」
パッと食べ終わったクレープをゴミ箱に入れ、千紗は澪の手を引いて走り出す。
「わっ!」
砂の上を全速力で走りだした千紗に、澪は競争心に火が付いたように感じた。
食べ終わったクレープの紙をゴミ箱に入れ、今度は千紗を追い越して、澪が展望台へ千紗の手を引いて走り出した。