「──先日のパンフレットデザインの件なんですが、先方からメインビジュアルの色味をもう少し落ち着かせたいとご連絡がありまして。はい、ただそうすると全体が沈むかもしれなくて、レイアウトも少し調整が必要かなと思ってます。……わかりました。明日朝までには」
通話終了ボタンを押すと同時に一気に疲労感に襲われた。早苗は深い溜息をつきながら目頭を抑えて天を仰ぐ。顔中に沈む夕日の強い光が降りかかり、目の奥がジンと痛んだ。
今から碧を迎えに行って夕飯を作ってお風呂に入れて寝かして、洗濯物を取り込んで洗い物をして、たぶん12時頃から取り掛かれるから3時間で終わらせて。
脳内でこれからの予定を組み立てながら、バッグに入れていたタブレットでデータを確認する。データが重いせいかなかなか開くことができず、ギリっと奥歯を噛んだその時、階段を踏み外した時のように急に体ががくりと下がった。
「きゃッ」
咄嗟にそばの電柱に手をついた。驚いて目をやればヒールの片方が取れている。
「もう……ッ、なんでこんな時に」
思わず髪をくしゃりと握る。まとめていたヘアクリップが髪を引っ張り顔を顰めた。
きつく目を瞑って何度か深呼吸を繰り返した。辛うじて繋がっていたヒールは引きちぎって、ヘアクリップを留め直す。
腕時計は延長保育のタイムリミットまであと10分を示していた。
タブレットを小脇に抱える。不安定なヒールで走り出した。
通話終了ボタンを押すと同時に一気に疲労感に襲われた。早苗は深い溜息をつきながら目頭を抑えて天を仰ぐ。顔中に沈む夕日の強い光が降りかかり、目の奥がジンと痛んだ。
今から碧を迎えに行って夕飯を作ってお風呂に入れて寝かして、洗濯物を取り込んで洗い物をして、たぶん12時頃から取り掛かれるから3時間で終わらせて。
脳内でこれからの予定を組み立てながら、バッグに入れていたタブレットでデータを確認する。データが重いせいかなかなか開くことができず、ギリっと奥歯を噛んだその時、階段を踏み外した時のように急に体ががくりと下がった。
「きゃッ」
咄嗟にそばの電柱に手をついた。驚いて目をやればヒールの片方が取れている。
「もう……ッ、なんでこんな時に」
思わず髪をくしゃりと握る。まとめていたヘアクリップが髪を引っ張り顔を顰めた。
きつく目を瞑って何度か深呼吸を繰り返した。辛うじて繋がっていたヒールは引きちぎって、ヘアクリップを留め直す。
腕時計は延長保育のタイムリミットまであと10分を示していた。
タブレットを小脇に抱える。不安定なヒールで走り出した。



