ガラスの街に、光と影が満ちていた。
シルヴァンの彫刻が広場一面に並び、透明な柱の奥で影がゆるやかに踊る。エリスは静かに「刃の詩」を詠い、その声が風に乗って響く。詩の韻が空気を震わせるたび、カイラの歌声がそれに重なった。彼女の調和の旋律は、帝国の重苦しい旋法と共和国の自由な節が絡み合い、ひとつの光になって昇る。

ツァーカムは群衆の中に立っていた。銀のリボンが風になびき、鎖の鈴が静かに鳴る。かつて鏡に映る自分を恐れた彼の瞳が、今は民の笑顔を映していた。癒しの波動が広場を包むと、影の印を額に持つ男も、銀のチョーカーをつけた女も、互いの手を取って踊り出した。

空には、双蛇の紋章を模した光の輪が浮かぶ。二つの光が交わるところに、淡い虹が生まれた。シルヴァンが放つ光が影を彫り、エリスの詩がその輪郭を彩り、カイラの歌が命を宿す。そのすべての中心で、ツァーカムが一歩を踏み出した。

「この街は、もはや鏡ではない」
彼の声が響くと、群衆が息を呑んだ。
「過去を映すだけの鏡ではなく、光と影が共に踊る場所だ。美は一人のものではない——皆の心で完成する」

その瞬間、彫刻が崩れ、無数の光の粒となって夜空に散った。ガラスの街がまるで星々の海のように輝く。ツァーカムはゆっくりと両手を広げ、癒しの波動を解き放つ。過去の痛み、帝国の罪、影の涙が、光の雨に溶けていく。
カイラの最後の一節が夜風に流れたとき、鈴の音が鳴り、街は静かに息を合わせた。
その調和の中で、ツァーカムは初めて微笑んだ——それは美の完成ではなく、共に生きる始まりだった。