名もなき剣に、雪が降る ― 無明隊奇譚




補記
沖田静は“存在の痕跡を残さない正義”の象徴であり、
記録に刻まれずとも人の技と心に刻まれる“風”そのもの。
彼の名は失われるが、その理は矢野蓮と弟子たちの稽古の中で生き続ける。






【総括】

風は、名を残さず。
雷は、名を呼ばず。

――だが二つが交わる時、
人の掟を越えて「技」と「心」が残る。

沖田静と矢野蓮は、
記録上の存在ではなく“伝承の記憶”として語り継がれた。
その痕跡は報告帳の空白に、風の通る道のりに、
そして、朝霧館の盥の水の輪に――確かに刻まれている。






【総評:無明隊の記録に残らなかった者たち】

記録に名を残す者は、秩序の礎となる。
記録に名を残さなかった者は、風の道となる。

――無明隊は、その両者が支え合って存在した。
一方に掟、もう一方に人間。
そしてその間に立ち続けたのが、
白装束の剣士・沖田静と、紅の雷槍・矢野蓮だった。