「先輩、大丈夫すか? 凛先輩がお粥作ってくれました。食べられます?」
「……食欲ない」
「でも食べないと薬の飲めませんから。少しだけでも食べて下さい」
 櫂李は夜中看病してくれた。
 お祭りからずっと繋いでくれていた手が、安心感を与えてくれる。

「少し、寝ます? オレがいると気になるでしょうから、一旦出ますね」
 立ちあがろうとした櫂李の服を掴んで引き留めた。

「先輩?」
「ここに……いて」
 櫂李は一つ頷いて「はい」と笑って座り直す。
「移したらごめん」
「先輩のものをもらえるなら、なんでも嬉しいです。風邪だろうが、なんだろうが」

 紫暮の言葉を思い出した。
 俺が信じたいかどうかだけじゃないかって……。
 一歩踏み込むだけだって。

 櫂李を信じたいと思う。
 こんなにも、諦めずに側にいてくれるのはこの先も櫂李しかいないと信じたい。

「……好きだ」
「え……先輩?」
「俺……櫂李が、好きだよ」
「星凪先輩? 本当ですか? 熱でどうにかなっちゃったとかじゃないですよね」
「熱でお前からの告白を待つのを忘れちまっただけ。気持ちは……本当だから」
「くっそ、オレから告白したかったのに。熱が下がってからって思って先越されました。先輩が愛好きです。誰よりも。誓います!」

 熱が下がったらデートに行こうと話し合いながら、眠りについた。
 手は、ずっと繋いでいてくれた。