打ち上がる花火が勢いを増し、終わりが近付いていると告げる。
大きなお祭りではないから、それほど多くの花火が上がるわけでもない。
「早めに、移動します? 最後まで見てたら帰り激混みですよ」
「でも……最後まで見たい。高校最後だから」
「俺は、デートが長引いてラッキーですけどね」
高校最後は言い訳だった。本当はもう少し櫂李とこうしていたかった。
お祭りという日常とは少し違う環境が、俺を素直にさせてくれた。
勘の鋭い櫂李はそんな心情にも気付いているだろうか。でも俺が嫌がるのを知ってるから、言わないでいてくれているのかもしれない。
結局最後まで櫂李からの告白はなかった。
それだけが心残りだった。
派手に打ち上がった花火がパラパラと落ちながら消えていく。
大きな音と共に、光が消えて真っ暗になった。
「終わっちゃいましたね」
「あっという間だったな」
「先輩、今日はありがとうございました」
「何が?」
「オレの我儘に付き合ってくれて。すげー楽しかったです」
「お……俺も。楽しかった。ありがと」
「本当ですか!? 嬉しいです」
いつも通りの櫂李の笑顔は暗がりで見えなかった。
「帰りましょう。足許、気を付けて下さい」
「うん……」
名残惜しいと思ってるのは俺だけか。
櫂李は俺と無理矢理、約束を交わしたと思ってるんだ。
だから、告白もなかったのか。
って、今日告白されたい欲ありすぎだ。
どこにもそんな保証はないっていうのに。
っていうか、じゃあ俺から告白すれば良いじゃんって言われそうだ。誰に? 紫暮に?
言えば誰もが同じことを言うだろうな。
帰りも手を繋いでくれている櫂李の一歩後ろをついて歩く。
すると、いきなり夜空で雷が光った。
一斉に空を見上げる。
ついさっきまで晴れていた空には星の一つも見えない。
「やば。急がないと」
ベンチで余韻に浸っている時間が思ったより長かったらしい。
周りは懸念していたほど混んでいなかった。
慌ててシェアハウスへと走り出したが、雨は降り始めてしまった。
「急すぎる」
「先輩、もう少し早く走れますか?」
「無理。下駄の鼻緒が痛くてしんどい」
本当は歩くだけでも神経を刺激されている。
最後の最後に困らせてしまった。そう思った次の瞬間、櫂李は軽々と俺を抱き上げた。
「バカっ、見られる」
「見られても良いです。ついでに先輩はオレのだーー!! ってアピールできるでしょ」
言いながら走り出す。
ほんと……ばか……。
「しがみついてて下さいね、先輩」
「うん」
櫂李の首許に顔を埋め、しっかりと首に腕を回す。
櫂李は一瞬肩をわななかせて、ダッシュで走り出した。
シェアハウスに帰った時には二人ともびしょ濡れ。
凛と煌陽は早めに会場を後にしたらしく、ギリギリセーフだったようだ。
「うわ、二人とも早く温まらないと風邪引く。お風呂沸いてるから直ぐ入ってきなよ」
「ありがと、凛。予報、外れたと思ってたのに」
「早まるとは思ってなかったよな」
煌陽も心配して様子を伺いに来てくれた。
「玄関で濡れた浴衣脱いでけ」
「了解。煌陽、ありがと」
櫂李と二人でお風呂……普段なら意識してしまうけど今はそんなこと言ってられない。
急いで頭からシャワーを浴び、全身を洗うと狭い浴槽に対面して浸かった。
「生き返る」
二人でハモって笑った。
お祭りの思い出話で盛り上がり、しっかりと体を温めたのに、その後俺だけが高熱に魘される結果となってしまった。
大きなお祭りではないから、それほど多くの花火が上がるわけでもない。
「早めに、移動します? 最後まで見てたら帰り激混みですよ」
「でも……最後まで見たい。高校最後だから」
「俺は、デートが長引いてラッキーですけどね」
高校最後は言い訳だった。本当はもう少し櫂李とこうしていたかった。
お祭りという日常とは少し違う環境が、俺を素直にさせてくれた。
勘の鋭い櫂李はそんな心情にも気付いているだろうか。でも俺が嫌がるのを知ってるから、言わないでいてくれているのかもしれない。
結局最後まで櫂李からの告白はなかった。
それだけが心残りだった。
派手に打ち上がった花火がパラパラと落ちながら消えていく。
大きな音と共に、光が消えて真っ暗になった。
「終わっちゃいましたね」
「あっという間だったな」
「先輩、今日はありがとうございました」
「何が?」
「オレの我儘に付き合ってくれて。すげー楽しかったです」
「お……俺も。楽しかった。ありがと」
「本当ですか!? 嬉しいです」
いつも通りの櫂李の笑顔は暗がりで見えなかった。
「帰りましょう。足許、気を付けて下さい」
「うん……」
名残惜しいと思ってるのは俺だけか。
櫂李は俺と無理矢理、約束を交わしたと思ってるんだ。
だから、告白もなかったのか。
って、今日告白されたい欲ありすぎだ。
どこにもそんな保証はないっていうのに。
っていうか、じゃあ俺から告白すれば良いじゃんって言われそうだ。誰に? 紫暮に?
言えば誰もが同じことを言うだろうな。
帰りも手を繋いでくれている櫂李の一歩後ろをついて歩く。
すると、いきなり夜空で雷が光った。
一斉に空を見上げる。
ついさっきまで晴れていた空には星の一つも見えない。
「やば。急がないと」
ベンチで余韻に浸っている時間が思ったより長かったらしい。
周りは懸念していたほど混んでいなかった。
慌ててシェアハウスへと走り出したが、雨は降り始めてしまった。
「急すぎる」
「先輩、もう少し早く走れますか?」
「無理。下駄の鼻緒が痛くてしんどい」
本当は歩くだけでも神経を刺激されている。
最後の最後に困らせてしまった。そう思った次の瞬間、櫂李は軽々と俺を抱き上げた。
「バカっ、見られる」
「見られても良いです。ついでに先輩はオレのだーー!! ってアピールできるでしょ」
言いながら走り出す。
ほんと……ばか……。
「しがみついてて下さいね、先輩」
「うん」
櫂李の首許に顔を埋め、しっかりと首に腕を回す。
櫂李は一瞬肩をわななかせて、ダッシュで走り出した。
シェアハウスに帰った時には二人ともびしょ濡れ。
凛と煌陽は早めに会場を後にしたらしく、ギリギリセーフだったようだ。
「うわ、二人とも早く温まらないと風邪引く。お風呂沸いてるから直ぐ入ってきなよ」
「ありがと、凛。予報、外れたと思ってたのに」
「早まるとは思ってなかったよな」
煌陽も心配して様子を伺いに来てくれた。
「玄関で濡れた浴衣脱いでけ」
「了解。煌陽、ありがと」
櫂李と二人でお風呂……普段なら意識してしまうけど今はそんなこと言ってられない。
急いで頭からシャワーを浴び、全身を洗うと狭い浴槽に対面して浸かった。
「生き返る」
二人でハモって笑った。
お祭りの思い出話で盛り上がり、しっかりと体を温めたのに、その後俺だけが高熱に魘される結果となってしまった。



