しくしくしくしく……
体育座りで顔をうずめて泣き続ける由愛。
「おい、由愛だいじょうぶか?」
しくしくしくしく……
(お兄ちゃんに嫌われちゃった、嫌われちゃったよ、私、絶対、嫌われちゃった……)
しくしくしくしく……
「ほんと大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ、私はいつも元気、へーき、平気。心配かけてごめんね、心配しないで」
ぶわっ
しくしくしくしく……
(お兄ちゃんに私の心の中を覗かれちゃった……深層心理を見られちゃった。どうしよ、どうしよう。生きていけない。どうしよう……)
しくしくしくしく……
バタッ
「あ、由愛?」
由愛が倒れてしまった。顔を見て様子を伺うと、単に意識を失っているようだ。ベットにそのまま寝かせて布団をかける。頭を撫でて「いいこ、いいこ、ナデコ、ナデコ」と声を掛けてあげる。
しかし何だな、何が悲しゅーて、由愛の夢の中で、ワザワザNTR考察せにゃならんのだ。
「おっ!」
すると、さっきのように由愛の頭に吸い込まれていった。
★
【まだ妹が告白する前の頃】
母が寝室で寝込んでいた。どうやら風邪らしい。
「義孝、お寝坊さんね。さっき由愛が出て行ったわ。お弁当作ってないの、ごめんなさい。由愛、昼御飯のお金を忘れたから持って行ってあげて」
「うん任せて、ほかに何かして欲しいことあるかい? おかゆでも作ろうか?」
「何言ってるのよ、学校行ってきなさい。お母さんは大丈夫」
「わかった。何かあったら連絡してくれ。早退して帰ってくるから」
「馬鹿言ってないで早く行きなさい」
俺はすぐに家を出て走って由愛を追いかけて行った。
おや、追いついたか。由愛が背中を触りながら歩いている。

「おーい、由愛ー」
「あ、お兄ちゃんっ、おはよー」
「背中、痒いんか?」
「朝っぱらから何言うのよ失礼ね、デリカシーなさすぎよ」
「いや制服のシャツの上から掻いてやるぞ? シャツの中は手を入れたら危険な画になるけど」
「な、人前でなんて出来るわけないじゃん! ばかっ」
「それはそうと、お前、昼メシのお金忘れてたぞ。持ってきた。ホレ」
「あ、ありがとうー。走ってきたの? ごめんね」
「可愛い妹の為だからな。こういう事は俺に任せろ」
「お兄ちゃん、アメちゃんいる? あげる」
「おう、ありがと」
(母さんもすぐにお菓子食べる? って聞いて来るし、妹も血筋だなぁ、すぐにアメちゃんをくれる。いつも持ってるんだよな。不思議な制服スカートポッケだ)
「あのねバレンタインについてどう思う?」
「ん、そうだな。いつも貰えなくて悲しいイベントだ」
「私が初めてチョコレートあげたの覚えてる?」
「うん? 由愛から貰ったのって中学生の頃だな」
「陽キャの人たちは気軽に義理でチョコあげられるから沢山集まるだけよ。本命になるお兄ちゃんは女子も真剣モードだから中々あげられないの。だから貰えなくてもいいんだよ」
「そうか、そんなものか。俺がモテるだなんて想像もつかないや」
「お兄ちゃんはモテるよ」
「そうかなぁ~」
「いつも瑞葉ねえちゃんから貰えるよね」
「ああ、だから贅沢言っちゃダメだよな」
「ねぇ来年のバレンタイン、手作りチョコが良い?」
「え、由愛が作るの?」
「うん……」
「市販品で好いよ。お前、料理できないだろ、食べれるのか?」
「それ言っちゃ駄目なやつ!」
周囲の男子生徒たちから羨ましい光線が俺に集中していた。
「まだまだ子供だと思っていた由愛がチョコねぇ」
「私もう高校一年生よ、お兄ちゃん、私のイメージを小学生の頃から成長させてよね」
小学生時の由愛 ↓

「お医者さんゴッコやったな」
「思い出すのやめて! せめて中学生の頃にして!」
中学3年生の由愛:身長152㎝ ↓

「前も思ったんだけどさ、好きな男子とかいるのか? クラスメイトとか」
「クラスメイトには居ないよ。好きな人はいるけど」
「なに! 誰? だれだよソレ。小林か? 小林幹夫か?」
「小林さんって初詣で一緒だったお兄ちゃんの友達? 違うよ」
「教えろよ、お兄ちゃん心配してしまうだろ」
「ひ・み・つ」
★
【放課後】
バスケの部活を終え、雨がパラついてきたので急いで家に帰る。母さんの風邪は良くなっただろうか? 何も連絡が来なかったので大丈夫と思うが、結構、家族想いの俺は心配性だ。もう少しで自宅だというところで、幼馴染で恋人の瑞葉が家の前にいた。
「あれ? 義孝君、お帰りなさい」

「おう、瑞葉、偶然だな」
「義孝君のお母さんに雑炊作って持ってきたのよ。作ったのは私のお母さんだけど」
「そりゃ悪かったな。家に入るか?」
「丁度、帰るところだったけど、寄ってくわ」
【思い出】
「ただいま。母さん大丈夫?」
「ふたたび、お邪魔しまーーーす」
「お帰りなさい、お兄ちゃん。お母さんは大丈夫よ。再びようこそ瑞葉ねえちゃん」
母さんの風邪は随分と改善していたが、今も尚、微熱が続いていたようで念のため寝ている。由愛は黄色のカエルさんジャージを着ていた。
【義孝の部屋】
先に帰っていた由愛と合流し、瑞葉と三人で昔のアルバムを見ていた。紅茶を入れてワイワイガヤガヤとしている。瑞葉は上着を脱ぎスカート、ラフな格好になっていた。
「わーっ、懐かしいーーっ! これ小学生の頃の私よね。義孝君かわいいー!」
<義孝と瑞葉が仲良く登校している写真>

「この頃は未だ俺たち恋人同士じゃなかったんだぜ、信じられるか?」
「ほんとよね、仲良かったまま今に至るんだものね、ふふふ」
「あ、ハイキングの写真! 懐かしーーーっ! 由愛ちゃんにチョッカイかけてる子がいるわ。誰だったかしら」
<五人の写真の中で、一人の男の子が由愛にチョッカイをかけている>

「こいつは桜井だな、引っ越してから交流もなくなった。今どうしてるかな」
「この桜井君、由愛ちゃんにすごく悪戯してきたよね。好きだったのかしら」
「え~~~~、わたしを好き?」
「あるよな小学生の頃って。悪戯イコール大好きってやつ」
「義孝君もよく私にチョッカイかけてきたよね? 悪戯されてよく泣いてたわ」
「頼む、忘れてくれ」
「お、お兄ちゃん……わたしには悪戯してくれなかった……」
「妹に悪戯する兄はおらんだろ」
「あ、これこれ、テニス姿の私。貴重な写真だわ」
<テニス姿の瑞葉>

「避暑地に旅行した時のだな。家でコート借り切って、ホームランばっかりで練習にならず」
「それは忘れて」
「あまりにもホームランばかりだったから、今はバトミントン部だもんな」
「「あはは……」」
「怒るわよ」
「でもな、テニス姿って凄く可愛いよな。ドキドキする」
「そのドキドキも見慣れるまでよ。バトミントンも同じ。ミニスカートがめくれてもスコートだし女性用のボトムスなのよ」
瑞葉が今はいているスカートをチラっと持ち上げる。奇麗な脹脛とむっちり太ももが見えてしまう。普通のスカートでやられると只の魅了魔法だ。ショーツまでは見えなかった。残念とは言うまい。将来、イチゴパンティを穿くようお願いしてみよう。それにしても無防備な恋人だ。妹がじっと俺の方を向いているが気にしない。頼むからそんなジト目で見ないでくれ。
「お兄ちゃん、ミニスカートが好きなの? 私も穿いてこようか?」
「好きだぞ。でも今のカエルさんジャージが似合ってるから大丈夫だぞ」
「そう……」
「そういやスコートの下、見られてもいいパンツってよく言うけど、男がドキドキする事には変わらん」
「エッチね義孝君」
「お兄ちゃんはデリカシーが足りないから……」
「あ、これ、避暑地の傍にあった池? 湖? で撮った……イヤ、思い出しちゃった、恥ずかしいわ」
<二人仲良く肩に手を回す義孝と瑞葉>

「俺たちラブラブだな。この後でさ、第三回の……」
「もう、なに言うの、恥ずかしいよ。義孝君ったら」
「デートに行きたくなっちゃうよな、こういうのを見てると」
「あそこ、また行ってみたいよね」
「え、瑞葉、そしたら記念すべき第四回が……」
「ばかっ、なんてことを言い出すのかしら」
(なぜか顔真っ赤になる瑞葉)
「……」
「由愛、どうした?」
「ううん……」
「由愛ちゃん……お兄ちゃん子だものね」
「あ、うん、そうだ、二人に飲み物淹れてくるね」
「私も手伝うわ」
「大丈夫、おねえちゃんはココにいて」
「う、うん」
「瑞葉ねえちゃん紅茶がいい? コーヒーかな?」
「俺コーヒー」
「私、紅茶で、ごめんね」
「少し待っててね。すぐに淹れてくるよ」
★
「お茶の用意出来たよー」
「「ありがとう!」」
「どういたしまして。あ、わたしね、友達から連絡があって少し部屋で話してくるね」
「おう、そうか。ゆっくりな」
「うん、二人ともごゆっくり。瑞葉ねえちゃん、くつろいでね。お兄ちゃんに襲われたら声出してね」
「おまっ、お前なぁ」
「うん、大丈夫よ。安心して、義孝くんはそんなことしないから」
「……じゃね」
★
「瑞葉、この写真の後で第三回キスをしたんだよな。覚えてる?」
「えっ、ええ。思い出してたわ。だから凄く恥ずかしくて、照れちゃった」
「あ、あのさ……」
「う、うん……」
俺は瑞葉に手をのばし抱き寄せた。瑞葉は既に緊張していた。両腕を彼女の身体にまわし、手でそっと頭を胸に押し付け密着する。彼女の身体はとても柔らかかった。胸の鼓動が激しくなる。瑞葉の両手は俺の胸の所にある。
「よ、よしたかくん、ダメ。結婚するまでは駄目よ……ダメなの」
「瑞葉、大丈夫だ、嫌がる事なんて何もしない。このまま暫くじっとしててくれ」
「う、うん……」
俺は瑞葉の頭を愛おしく撫で、額に軽くキスをする。「あっ」と小さな声がした。服の上から背中も優しく触る。香りが心地よい。好きな人って本当に愛おしく感じるし、可愛くて堪らない。抱き締めているだけで俺の心は大変だ。髪の毛を指でなぞって耳を、掌で頬を優しく触り、うなじへと進ませた。俺の腕は殆どオートマチックに彼女の身体を移動していく。時々ビクっとする純な反応に庇護欲が高まる。
「みずは……好きだよ」
ぎゅっと力を強くして抱き締める。瑞葉も胸に置いていた手を俺の背中に回して抱き返してきた。密着度が高まり、心の底から人を愛する幸せに包まれる。
「わたしも……私もだよ、大好き、よしたかくん……」
うっ、これは……できる? 今日こそは出来る?
「だ、第四回キス大会を開催してもいいかな……(ぼそっ)」
「えっ、そ、それは……まだ一年経ってないよ……」
俺は彼女の恥ずかしがる赤い顔からOKと判断して無言で指を使って彼女の顎を上げる。「あ……」呟く瑞葉。奇麗で可愛い魅力的な唇をみる。柔らかそうだ。
「みずは……」
「……」
素直に目を瞑る瑞葉。
ガチャン! バタバタバタッ
由愛の部屋から誰か来る!
「お兄ちゃんっっ!」
「可愛い妹が隣の部屋にいるのに! お兄ちゃんはっっ!」
「なんてハレンチな大会を開催しようとしてるんですかっっ!!」
「そんなことするなんて、お、お、お兄ちゃんのばかぁ~~~~!!!」
★
「ぐすん、ぐすん」
「ほら由愛、この写真を見てみろ。由愛可愛くて俺たちラブラブだぞ」
<義孝に仲良く肩を抱かれる由愛>

「由愛ちゃん、かわいいーーーっ!」
「また行こうな、由愛」
「ぐすん、ぐすん」
「ほら、機嫌なおして。義孝くんとは、あのまま進んでも何もなかったからネ、ねっ」
「瑞葉ねえちゃん……」
「由愛、頭なでこ、なでこ。何したら機嫌なおるかな?」
「だっこ。今夜寝る前に抱っこしてくれたら……約束してくれたら機嫌治る……」
「わかった。約束だ」
↓
前の項(第一話)の家族ハグに戻る。
★★★★★
尚、ハイキングで由愛にちょっかいをかけていた桜井君は、高校二年生で転校してきて義孝と由愛、瑞葉と再会。ますます可愛くなった由愛と瑞葉に熱を上げ、積極的にアプローチをしました。そして第二回NTR危機に陥りましたが、二人ともギリギリで助かりました。
★★★★★
【白い部屋】
ハッ!
ふぅ~、由愛の夢の中から戻ってきたか。今回はえらい長かった気がするな。由愛は……まだ意識を無くしたままか。相変わらず壁に耳を当てて会話を聞いてるんだな、可愛い妹だよ(くすり)。気づいてないふりをしなきゃな。
頭を撫でながら愛おしそうに妹をみる優しい兄であった。
(胸が苦しいよ……苦しすぎるよ……お兄ちゃん)
体育座りで顔をうずめて泣き続ける由愛。
「おい、由愛だいじょうぶか?」
しくしくしくしく……
(お兄ちゃんに嫌われちゃった、嫌われちゃったよ、私、絶対、嫌われちゃった……)
しくしくしくしく……
「ほんと大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ、私はいつも元気、へーき、平気。心配かけてごめんね、心配しないで」
ぶわっ
しくしくしくしく……
(お兄ちゃんに私の心の中を覗かれちゃった……深層心理を見られちゃった。どうしよ、どうしよう。生きていけない。どうしよう……)
しくしくしくしく……
バタッ
「あ、由愛?」
由愛が倒れてしまった。顔を見て様子を伺うと、単に意識を失っているようだ。ベットにそのまま寝かせて布団をかける。頭を撫でて「いいこ、いいこ、ナデコ、ナデコ」と声を掛けてあげる。
しかし何だな、何が悲しゅーて、由愛の夢の中で、ワザワザNTR考察せにゃならんのだ。
「おっ!」
すると、さっきのように由愛の頭に吸い込まれていった。
★
【まだ妹が告白する前の頃】
母が寝室で寝込んでいた。どうやら風邪らしい。
「義孝、お寝坊さんね。さっき由愛が出て行ったわ。お弁当作ってないの、ごめんなさい。由愛、昼御飯のお金を忘れたから持って行ってあげて」
「うん任せて、ほかに何かして欲しいことあるかい? おかゆでも作ろうか?」
「何言ってるのよ、学校行ってきなさい。お母さんは大丈夫」
「わかった。何かあったら連絡してくれ。早退して帰ってくるから」
「馬鹿言ってないで早く行きなさい」
俺はすぐに家を出て走って由愛を追いかけて行った。
おや、追いついたか。由愛が背中を触りながら歩いている。

「おーい、由愛ー」
「あ、お兄ちゃんっ、おはよー」
「背中、痒いんか?」
「朝っぱらから何言うのよ失礼ね、デリカシーなさすぎよ」
「いや制服のシャツの上から掻いてやるぞ? シャツの中は手を入れたら危険な画になるけど」
「な、人前でなんて出来るわけないじゃん! ばかっ」
「それはそうと、お前、昼メシのお金忘れてたぞ。持ってきた。ホレ」
「あ、ありがとうー。走ってきたの? ごめんね」
「可愛い妹の為だからな。こういう事は俺に任せろ」
「お兄ちゃん、アメちゃんいる? あげる」
「おう、ありがと」
(母さんもすぐにお菓子食べる? って聞いて来るし、妹も血筋だなぁ、すぐにアメちゃんをくれる。いつも持ってるんだよな。不思議な制服スカートポッケだ)
「あのねバレンタインについてどう思う?」
「ん、そうだな。いつも貰えなくて悲しいイベントだ」
「私が初めてチョコレートあげたの覚えてる?」
「うん? 由愛から貰ったのって中学生の頃だな」
「陽キャの人たちは気軽に義理でチョコあげられるから沢山集まるだけよ。本命になるお兄ちゃんは女子も真剣モードだから中々あげられないの。だから貰えなくてもいいんだよ」
「そうか、そんなものか。俺がモテるだなんて想像もつかないや」
「お兄ちゃんはモテるよ」
「そうかなぁ~」
「いつも瑞葉ねえちゃんから貰えるよね」
「ああ、だから贅沢言っちゃダメだよな」
「ねぇ来年のバレンタイン、手作りチョコが良い?」
「え、由愛が作るの?」
「うん……」
「市販品で好いよ。お前、料理できないだろ、食べれるのか?」
「それ言っちゃ駄目なやつ!」
周囲の男子生徒たちから羨ましい光線が俺に集中していた。
「まだまだ子供だと思っていた由愛がチョコねぇ」
「私もう高校一年生よ、お兄ちゃん、私のイメージを小学生の頃から成長させてよね」
小学生時の由愛 ↓

「お医者さんゴッコやったな」
「思い出すのやめて! せめて中学生の頃にして!」
中学3年生の由愛:身長152㎝ ↓

「前も思ったんだけどさ、好きな男子とかいるのか? クラスメイトとか」
「クラスメイトには居ないよ。好きな人はいるけど」
「なに! 誰? だれだよソレ。小林か? 小林幹夫か?」
「小林さんって初詣で一緒だったお兄ちゃんの友達? 違うよ」
「教えろよ、お兄ちゃん心配してしまうだろ」
「ひ・み・つ」
★
【放課後】
バスケの部活を終え、雨がパラついてきたので急いで家に帰る。母さんの風邪は良くなっただろうか? 何も連絡が来なかったので大丈夫と思うが、結構、家族想いの俺は心配性だ。もう少しで自宅だというところで、幼馴染で恋人の瑞葉が家の前にいた。
「あれ? 義孝君、お帰りなさい」

「おう、瑞葉、偶然だな」
「義孝君のお母さんに雑炊作って持ってきたのよ。作ったのは私のお母さんだけど」
「そりゃ悪かったな。家に入るか?」
「丁度、帰るところだったけど、寄ってくわ」
【思い出】
「ただいま。母さん大丈夫?」
「ふたたび、お邪魔しまーーーす」
「お帰りなさい、お兄ちゃん。お母さんは大丈夫よ。再びようこそ瑞葉ねえちゃん」
母さんの風邪は随分と改善していたが、今も尚、微熱が続いていたようで念のため寝ている。由愛は黄色のカエルさんジャージを着ていた。
【義孝の部屋】
先に帰っていた由愛と合流し、瑞葉と三人で昔のアルバムを見ていた。紅茶を入れてワイワイガヤガヤとしている。瑞葉は上着を脱ぎスカート、ラフな格好になっていた。
「わーっ、懐かしいーーっ! これ小学生の頃の私よね。義孝君かわいいー!」
<義孝と瑞葉が仲良く登校している写真>

「この頃は未だ俺たち恋人同士じゃなかったんだぜ、信じられるか?」
「ほんとよね、仲良かったまま今に至るんだものね、ふふふ」
「あ、ハイキングの写真! 懐かしーーーっ! 由愛ちゃんにチョッカイかけてる子がいるわ。誰だったかしら」
<五人の写真の中で、一人の男の子が由愛にチョッカイをかけている>

「こいつは桜井だな、引っ越してから交流もなくなった。今どうしてるかな」
「この桜井君、由愛ちゃんにすごく悪戯してきたよね。好きだったのかしら」
「え~~~~、わたしを好き?」
「あるよな小学生の頃って。悪戯イコール大好きってやつ」
「義孝君もよく私にチョッカイかけてきたよね? 悪戯されてよく泣いてたわ」
「頼む、忘れてくれ」
「お、お兄ちゃん……わたしには悪戯してくれなかった……」
「妹に悪戯する兄はおらんだろ」
「あ、これこれ、テニス姿の私。貴重な写真だわ」
<テニス姿の瑞葉>

「避暑地に旅行した時のだな。家でコート借り切って、ホームランばっかりで練習にならず」
「それは忘れて」
「あまりにもホームランばかりだったから、今はバトミントン部だもんな」
「「あはは……」」
「怒るわよ」
「でもな、テニス姿って凄く可愛いよな。ドキドキする」
「そのドキドキも見慣れるまでよ。バトミントンも同じ。ミニスカートがめくれてもスコートだし女性用のボトムスなのよ」
瑞葉が今はいているスカートをチラっと持ち上げる。奇麗な脹脛とむっちり太ももが見えてしまう。普通のスカートでやられると只の魅了魔法だ。ショーツまでは見えなかった。残念とは言うまい。将来、イチゴパンティを穿くようお願いしてみよう。それにしても無防備な恋人だ。妹がじっと俺の方を向いているが気にしない。頼むからそんなジト目で見ないでくれ。
「お兄ちゃん、ミニスカートが好きなの? 私も穿いてこようか?」
「好きだぞ。でも今のカエルさんジャージが似合ってるから大丈夫だぞ」
「そう……」
「そういやスコートの下、見られてもいいパンツってよく言うけど、男がドキドキする事には変わらん」
「エッチね義孝君」
「お兄ちゃんはデリカシーが足りないから……」
「あ、これ、避暑地の傍にあった池? 湖? で撮った……イヤ、思い出しちゃった、恥ずかしいわ」
<二人仲良く肩に手を回す義孝と瑞葉>

「俺たちラブラブだな。この後でさ、第三回の……」
「もう、なに言うの、恥ずかしいよ。義孝君ったら」
「デートに行きたくなっちゃうよな、こういうのを見てると」
「あそこ、また行ってみたいよね」
「え、瑞葉、そしたら記念すべき第四回が……」
「ばかっ、なんてことを言い出すのかしら」
(なぜか顔真っ赤になる瑞葉)
「……」
「由愛、どうした?」
「ううん……」
「由愛ちゃん……お兄ちゃん子だものね」
「あ、うん、そうだ、二人に飲み物淹れてくるね」
「私も手伝うわ」
「大丈夫、おねえちゃんはココにいて」
「う、うん」
「瑞葉ねえちゃん紅茶がいい? コーヒーかな?」
「俺コーヒー」
「私、紅茶で、ごめんね」
「少し待っててね。すぐに淹れてくるよ」
★
「お茶の用意出来たよー」
「「ありがとう!」」
「どういたしまして。あ、わたしね、友達から連絡があって少し部屋で話してくるね」
「おう、そうか。ゆっくりな」
「うん、二人ともごゆっくり。瑞葉ねえちゃん、くつろいでね。お兄ちゃんに襲われたら声出してね」
「おまっ、お前なぁ」
「うん、大丈夫よ。安心して、義孝くんはそんなことしないから」
「……じゃね」
★
「瑞葉、この写真の後で第三回キスをしたんだよな。覚えてる?」
「えっ、ええ。思い出してたわ。だから凄く恥ずかしくて、照れちゃった」
「あ、あのさ……」
「う、うん……」
俺は瑞葉に手をのばし抱き寄せた。瑞葉は既に緊張していた。両腕を彼女の身体にまわし、手でそっと頭を胸に押し付け密着する。彼女の身体はとても柔らかかった。胸の鼓動が激しくなる。瑞葉の両手は俺の胸の所にある。
「よ、よしたかくん、ダメ。結婚するまでは駄目よ……ダメなの」
「瑞葉、大丈夫だ、嫌がる事なんて何もしない。このまま暫くじっとしててくれ」
「う、うん……」
俺は瑞葉の頭を愛おしく撫で、額に軽くキスをする。「あっ」と小さな声がした。服の上から背中も優しく触る。香りが心地よい。好きな人って本当に愛おしく感じるし、可愛くて堪らない。抱き締めているだけで俺の心は大変だ。髪の毛を指でなぞって耳を、掌で頬を優しく触り、うなじへと進ませた。俺の腕は殆どオートマチックに彼女の身体を移動していく。時々ビクっとする純な反応に庇護欲が高まる。
「みずは……好きだよ」
ぎゅっと力を強くして抱き締める。瑞葉も胸に置いていた手を俺の背中に回して抱き返してきた。密着度が高まり、心の底から人を愛する幸せに包まれる。
「わたしも……私もだよ、大好き、よしたかくん……」
うっ、これは……できる? 今日こそは出来る?
「だ、第四回キス大会を開催してもいいかな……(ぼそっ)」
「えっ、そ、それは……まだ一年経ってないよ……」
俺は彼女の恥ずかしがる赤い顔からOKと判断して無言で指を使って彼女の顎を上げる。「あ……」呟く瑞葉。奇麗で可愛い魅力的な唇をみる。柔らかそうだ。
「みずは……」
「……」
素直に目を瞑る瑞葉。
ガチャン! バタバタバタッ
由愛の部屋から誰か来る!
「お兄ちゃんっっ!」
「可愛い妹が隣の部屋にいるのに! お兄ちゃんはっっ!」
「なんてハレンチな大会を開催しようとしてるんですかっっ!!」
「そんなことするなんて、お、お、お兄ちゃんのばかぁ~~~~!!!」
★
「ぐすん、ぐすん」
「ほら由愛、この写真を見てみろ。由愛可愛くて俺たちラブラブだぞ」
<義孝に仲良く肩を抱かれる由愛>

「由愛ちゃん、かわいいーーーっ!」
「また行こうな、由愛」
「ぐすん、ぐすん」
「ほら、機嫌なおして。義孝くんとは、あのまま進んでも何もなかったからネ、ねっ」
「瑞葉ねえちゃん……」
「由愛、頭なでこ、なでこ。何したら機嫌なおるかな?」
「だっこ。今夜寝る前に抱っこしてくれたら……約束してくれたら機嫌治る……」
「わかった。約束だ」
↓
前の項(第一話)の家族ハグに戻る。
★★★★★
尚、ハイキングで由愛にちょっかいをかけていた桜井君は、高校二年生で転校してきて義孝と由愛、瑞葉と再会。ますます可愛くなった由愛と瑞葉に熱を上げ、積極的にアプローチをしました。そして第二回NTR危機に陥りましたが、二人ともギリギリで助かりました。
★★★★★
【白い部屋】
ハッ!
ふぅ~、由愛の夢の中から戻ってきたか。今回はえらい長かった気がするな。由愛は……まだ意識を無くしたままか。相変わらず壁に耳を当てて会話を聞いてるんだな、可愛い妹だよ(くすり)。気づいてないふりをしなきゃな。
頭を撫でながら愛おしそうに妹をみる優しい兄であった。
(胸が苦しいよ……苦しすぎるよ……お兄ちゃん)



