【お願い】R15相当ですから、苦手な方、対象者以外の方はブラウザバックをお願いいたします。
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気がつけば知らない天井だった。天井は白く、空間も白い。床も白い。真っ白い部屋にいた。俺はベットに寝かされていた。隣には妹の由愛が引っ付いて寝ていた。
「おい由愛、寝てるのか、起きろ」
ゆさゆさと揺すってみても起きる気配がなかった。由愛の頭を撫でながら今を認識しよう、常識に当てはめようと試みた。
「どうしたんだ、俺は。トラックに跳ねられてオジサン運転手と助手の娘が出てきて、ここはどこだ? 由愛も一緒に跳ねられたのか? 違うよな。あの時は……」
記憶を探る。覚えているのは、妹と近所を散歩していて自宅へ戻る途中で狭い道ながらトラックが突然現れて妹を庇って俺が跳ねられた、トラックが現れるだなんて気配すらなかった。
その後、救護のためなのかトラック運転手と助手席から女の子が出てきて「お久しぶり」みたいにフレンドリーに接してきた、それだけだった。
跳ねられた衝撃は余りなかった。ふわりと着地したような感じだった。普通のトラックならかなりの衝撃だった筈だ。死ぬかもしれない交通事故で、どうしてこんなに余裕に思考しているのだろう、自分自身でもよく分からない。
この不思議な展開は、世間に溢れかえるラノベのタイムリープ、または異世界への扉が開いたパターンだろうか。でも俺一人じゃない。妹が隣で寝ている。妹は俺が腕をつかんで迫りくるトラックから離して避けれたはず。きっと大丈夫、起きたらそれを確認するのが第一だ。とにかく由愛の身体が心配だ。
そして周りを見渡してみる。床とベットしかない。壁もなく、天井すらない。見慣れた天井なんかというレベルではなく、天井自体がない。それなら見えるはずの空も丸っきり見えないし、不思議だ。物理的な世界じゃないのか? 床は白いまま柔らかい感じで、空気は体温と同じような感じで暑くもなく寒くもない。山で吸い込む美味しい澄んだ空気みたいな、快適な温度だった。
もう一度、由愛の寝顔を見る。普通にスヤスヤ寝ている。
ラノベなら、普通は神様が出てきてお告げなり、転生や転移の話をしてくれるはず。スキルの授与もあってチートで異世界を席巻させてくれるんだよな。出来ればモテるハーレム系が良い。
もし異世界でなくて、タイムリープだったら、いつ頃に飛ぶとか、若い親に会ったりして恋愛を邪魔するなとか、自分自身には決して会うなとか、兎にも角にも歴史を変えるなとの説明があってしかるべき。うん。でもこの白い空間には誰もいないな。
どうして誰もいないんだろう? 案内ぐらい寄こして欲しい。異世界とかだと神様の頼みごとがあるんだよな。頼みごとがあるなら、どうして誰もいないんだろう? 魔法は絶対に使いたいのだが。
白いだけの空間。しかしベットと清潔なシーツだけはある。妹もいる。なぜ妹は巻き込まれたのか? ひょっとしてトラックと接触したのだろうか? そもそも異世界への移動がどうしてトラックなんだ? バイクだっていいじゃないか。クラス転移なら空間魔法(転移魔法)だよな。魔法陣の方がトラックで跳ねるより安全だよな。
妹・由愛の頭を撫でながら、もう一度、寝顔を覗く。可愛い顔している。まさかこのまま一生目を覚まさないのでは? 医者はいないのか? 白いベットが一つ、白衣の研究者がやってきて「うむ、我々の実験は成功した!」などと言いながら政府の研究施設だったりしないか? それなら早く助けてくれよ。頼むよ、誰でもいいからさ。
まさかゲームの世界か? ここから脱出するシチュエーションスリラー。キスしないと出れないとかのヤツだ。変なゲームだとエッチしないと出れないとかもあったよな。でも他に女の子はいないし、妹とはキスだって常識に照らし合わせても駄目だ。そりゃ可愛いけど、そりゃ仲がいい兄妹でも、変な条件を出されても絶対に俺はお兄ちゃんとして変なことは妹にしない。うむ。妹の頭を撫でる。
立ち上がってジャンプしてみた。空は飛べなかった。また、このまま真っ直ぐに進んだらどうだろう? 利き足の影響でグルグル回って元に戻ってくるのかな。いや由愛が寝てるから単独行動は出来ない。フラグがたってしまう。先にちょっと進んだら壁に当たるかな? そこに偶然に出口はあるのか? 非常口ぐらい設置しておいてくれてもいいだろう。お化け屋敷にすら非常口はあるぞ。なっとらんなココ。管理責任者出てこい。
しかし独り言ばかりになっているが、いまだに何も変化はない。何か起きないと話が進まないのだが、なんだろう、この焦燥感は。俺は結構、異変なんかには鈍感というか起きた事象に対して度胸がある方だから、焦る事なんてない、今の焦燥感は全く想定外だ。神様は出てきても余裕で対処できる自信がある。女神さまなら尚オツケー。
そこまで思考すると……事態が動いた。
ひゅーーーーーん
由愛の頭を撫でていた俺は、妙な音と共に由愛の頭の中にすぅ~っと入っていった。まるで幽体が乗り移るかのように。ゆっくりと、スムーズに、由愛の頭の中に吸い込まれていった。俺の視覚は歪んだ。
そしてまるでリセットされたかのように俺の思考もまっさらになった。頭の中のスクリーンに何も映っていないような感じだ。
★★★★★
【由愛の夢の中】
散歩から由愛と一緒に家に帰ると、幼馴染で恋人でもある瑞葉からスマホで連絡があり、一時間半ほど後で家まで来るとのこと。それまで自由な時間ができた。
そして今、なぜか俺はネトラレというものについて考察していた。ベットに寝転び、それに付随する事も含めて思索にふけっている。
「寝取られの復讐って何があるかなぁ、考えつかないや。まだ俺って性癖が歪んでるのか? NTR自体が絶対に嫌だよ。なのに夢に出てきて可愛い恋人の瑞葉や大切な由愛を他人に奪われようとして喜ぶものか? 何故そんな夢を見たんだろう」
「それに復讐ってさ、未練やスリルを味わってるから別れずに浮気をするんだろ? だったら発覚したら直ぐに別れるのが一番の復讐だと思うんだよな。ホテルに入るところは映像で撮ればいいし、出てくる時なら映像を撮りながら二人に走って近づいて「お前らあのホテルから出てきただろ」って問えばやり取りで分かるだろうし、学校に提出すれば良くて停学、悪くて退学。直ぐにやるからこそ復讐もインパクトが大事、後にジワジワと間男・彼女を苦しめ反省させられると思うんだよな」
「じっくり作戦練ってというが、こっちの心の苦しみに負けちゃったら駄目だし、時間をかける方が何やかんやとリスクがあるよな。だって浮気を知ってて放置するって、復讐まで彼女が間男にキスされ抱かれ続けるんだぞ? 俺には耐えられない。すぐにでも別れるよな、うん」
「考え始めると奥が深いなネトラレってやつは」
「もし瑞葉が浮気していた場面を見てしまったとしよう。俺はどうする? 以前の時は夢の世界のせいで半狂乱だったが、今の現実世界では冷静だ。どうやって別れる? 別れないという選択はいくら好きな恋人でもないよな。メッセージ送って、もう会わない、学校では基本無視、というところか」
「間男に彼女がいたら共同戦線を張るか? いやないな。新たに付き合うというコースを設定しなければ無理。しかしだな、新しくなった彼女の顔を見るたび元彼の間男の顔が浮かぶし、いい雰囲気になった時ほど、思い出すんじゃないだろうか。間男彼女との共闘も無理だな」
……コンコン、コンコン……
「……」
【由愛の夢の中】
……コンコン
「お兄ちゃん、今時間ダメかな?」
「ああ、由愛か、入ってくれ」
ガチャ
黄色のカエルさんジャージ・バージョンの由愛が現れた。今回はパジャマではない。このジャージ、幼児体型が似合いすぎる。可愛すぎて危険だな。胸は可愛らしく盛り上がっているし。意外とお尻が大きくて安産型だな、お兄ちゃん驚いたぞ。
「ねぇ、お兄ちゃん、瑞葉ねえちゃんが来るまで時間あるでしょ、夕飯を作るのも今晩はお母さんが作ってくれるし、少し一緒に居たいな……」
「いいぞ、そこにお座り」
「ベットに腰かける」
「……分かった」
ごくり
「お兄ちゃん、何してたの?」
「あ、うん、俺の夢の世界について考察、思考をのばしてた」
「何か分かった?」
「うーん、寝取られってどうやったら復讐できるのかなーって」
「相手より幸せになるじゃダメなの?」
「幸せにか。それはアリだとは思うんだが、幸せになるってどうすればいいんだろう? 悩む」
「簡単だよ、愛し合えばいいんだよ」
「由愛は男子から迫られたら嫌と感じるか?」
「迫ってくる相手に拠るよ。一人の好きな……お兄ちゃん以外の男性は嫌」
「迫ってくるって抱き締めるという程度でも嫌なんだろうか? 質問の意味が分かりにくいか」
「当たり前だよ。抱き締められるって相当エッチな行動よ、好きな人以外はされたくないよ」
「そうか、そうだよな」
「それでね、だっこ。だっこして」
「えっ未だ暗くなったばかりの夕方だぞ」
「約束……」
「仕方ないな……約束だもんな……」
ベットに寝転んでいた俺は上半身を起こし、端に座る由愛の両肩を掴み、後ろに優しく引き倒した。由愛は緊張していたが素直にコテンと寝転んだ。彼女の顔が真っ赤になっていた。
「由愛、俺さ、さっき夢の世界のこと考えていたって言ったろ、主にネトラレの件なんだ。復讐はどうしたって即別れる方が良いとか、そんな程度の話。でさ、NTRって抱き締めるだけで寝取られになるのかな、キスとか、その先をしてないと成立しないんじゃなかろうか?」
「お兄ちゃん、哲学的っぽく真面目そうに話してるけど、ただエッチな話だよねソレ」
「あう」
「早くだっこして。約束」
俺は今どこにいるのか、何をやっていたのか混乱していたが、取り急ぎ由愛を抱き締めなければいけないようだ。さっき白い部屋で寝転んでいたような気もするが、それは後で検証しよう。
「由愛、いつもありがとうな。おかげで助かってるぞ」
「お兄ちゃんの役に立てたんなら嬉しいよ」
俺は由愛の髪をすきながら頭をなでる。そして弱点と判明した耳を触る。指を優しく入れてみるか。そして耳たぶを丁寧に揉んで息を吹きかけ、抱っこを継続、由愛も今回ばかりは掘り出しもんの家族ハグでノックアウトだな。
「あ、耳ダメっ! お兄ちゃん!」
「フフフ、これか、これか、フフフ……」
由愛の弱点を完全に把握した。耳とくれば次は首筋だな。耳の刺激のせいで目をしっかりと閉じた由愛は隙だらけであった。人差し指、中指を中心に首筋の産毛に触れるように手をスローに動かす。顎から頬に向かって優しく、とても優しくなぞっていく。決してイヤらしくしてはいけない。
「こんなのって……こんなの……いや……お兄ちゃんのばか……」
「フフフ」
力の抜けきった妹必殺の「お兄ちゃんばかっ」では俺は倒せんぞ、由愛。今回も俺の勝ちだ。可愛い由愛の顔を優しく愛撫し、心の底から愛しい気持ちで、リラックスして欲しいという気持ちを込めて愛撫を続ける。本当に由愛は可愛くて奇麗な顔をしている。それを自由に触れるだなんてお兄ちゃん冥利に尽きる。
「由愛、いいこ、いいこ、ナデコ、ナデコ……」
ぎゅっとするため背中へ腕を回すと、由愛が意外なリクエストを言ってきた。
「背中が痒い……ので、少し掻いて貰っていいかな……お兄しゃ…ん……」
夫婦のメリットで背中が痒い時にいつでも掻いて貰える、という事があげられると聞いたことがある。これかと。ジャージの中に手を入れ、背中を直に掻く。
「あれ? お前ブラつけてないんか?」
「……う、うん……そんなこと指摘しないで……」
「コリコリコリ……どの辺が痒いんだ?」
「右肩の肩甲骨のあたり、背骨の真っすぐな線に沿っても掻いて欲しいの……」
由愛の肌のぬくもりが手に直に伝わってくる。すべすべの肌だ。俺は由愛のリクエストに沿って背中を掻いたり揉んだり滑らせたりでマッサージしていく。
「いやん、好きな人に触ってもらえると嬉しく感じるんだぁ……あ……」
「そうか? そりゃ嬉しいな」
「そ、それでね、お兄ちゃん、そのままギュっとして、あ、そこ! あ、前の方は触っちゃダメぇ」
「分かった」
ぎゅぅぅ~~~~~~~
「あっ、だっ、だめっ、お兄ちゃん、らめぇぇぇーーーーっ」
★★★★★
おっと、白い世界の部屋に戻ってきたぞ? 今のは何だったんだ? 由愛の夢の世界に入ってたのか? 隣には由愛が眠ったままだ。
「おい、由愛、おい、起きろ」
パチッ
「あ、お兄ちゃん、ま、まだ私達、早いわ。高校生だもん。だ、ダメ、駄目よ、兄妹でそんなにされたら私……お兄ちゃんに夢中になりすぎて死んじゃう……ば、バストトップだけは優しくお口に含むだけにしてね」
「何言ってるんだ由愛、目を覚ませ! 寝ぼけるな! 俺たちはリアルでは何もしていない!」
「え…………」
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気がつけば知らない天井だった。天井は白く、空間も白い。床も白い。真っ白い部屋にいた。俺はベットに寝かされていた。隣には妹の由愛が引っ付いて寝ていた。
「おい由愛、寝てるのか、起きろ」
ゆさゆさと揺すってみても起きる気配がなかった。由愛の頭を撫でながら今を認識しよう、常識に当てはめようと試みた。
「どうしたんだ、俺は。トラックに跳ねられてオジサン運転手と助手の娘が出てきて、ここはどこだ? 由愛も一緒に跳ねられたのか? 違うよな。あの時は……」
記憶を探る。覚えているのは、妹と近所を散歩していて自宅へ戻る途中で狭い道ながらトラックが突然現れて妹を庇って俺が跳ねられた、トラックが現れるだなんて気配すらなかった。
その後、救護のためなのかトラック運転手と助手席から女の子が出てきて「お久しぶり」みたいにフレンドリーに接してきた、それだけだった。
跳ねられた衝撃は余りなかった。ふわりと着地したような感じだった。普通のトラックならかなりの衝撃だった筈だ。死ぬかもしれない交通事故で、どうしてこんなに余裕に思考しているのだろう、自分自身でもよく分からない。
この不思議な展開は、世間に溢れかえるラノベのタイムリープ、または異世界への扉が開いたパターンだろうか。でも俺一人じゃない。妹が隣で寝ている。妹は俺が腕をつかんで迫りくるトラックから離して避けれたはず。きっと大丈夫、起きたらそれを確認するのが第一だ。とにかく由愛の身体が心配だ。
そして周りを見渡してみる。床とベットしかない。壁もなく、天井すらない。見慣れた天井なんかというレベルではなく、天井自体がない。それなら見えるはずの空も丸っきり見えないし、不思議だ。物理的な世界じゃないのか? 床は白いまま柔らかい感じで、空気は体温と同じような感じで暑くもなく寒くもない。山で吸い込む美味しい澄んだ空気みたいな、快適な温度だった。
もう一度、由愛の寝顔を見る。普通にスヤスヤ寝ている。
ラノベなら、普通は神様が出てきてお告げなり、転生や転移の話をしてくれるはず。スキルの授与もあってチートで異世界を席巻させてくれるんだよな。出来ればモテるハーレム系が良い。
もし異世界でなくて、タイムリープだったら、いつ頃に飛ぶとか、若い親に会ったりして恋愛を邪魔するなとか、自分自身には決して会うなとか、兎にも角にも歴史を変えるなとの説明があってしかるべき。うん。でもこの白い空間には誰もいないな。
どうして誰もいないんだろう? 案内ぐらい寄こして欲しい。異世界とかだと神様の頼みごとがあるんだよな。頼みごとがあるなら、どうして誰もいないんだろう? 魔法は絶対に使いたいのだが。
白いだけの空間。しかしベットと清潔なシーツだけはある。妹もいる。なぜ妹は巻き込まれたのか? ひょっとしてトラックと接触したのだろうか? そもそも異世界への移動がどうしてトラックなんだ? バイクだっていいじゃないか。クラス転移なら空間魔法(転移魔法)だよな。魔法陣の方がトラックで跳ねるより安全だよな。
妹・由愛の頭を撫でながら、もう一度、寝顔を覗く。可愛い顔している。まさかこのまま一生目を覚まさないのでは? 医者はいないのか? 白いベットが一つ、白衣の研究者がやってきて「うむ、我々の実験は成功した!」などと言いながら政府の研究施設だったりしないか? それなら早く助けてくれよ。頼むよ、誰でもいいからさ。
まさかゲームの世界か? ここから脱出するシチュエーションスリラー。キスしないと出れないとかのヤツだ。変なゲームだとエッチしないと出れないとかもあったよな。でも他に女の子はいないし、妹とはキスだって常識に照らし合わせても駄目だ。そりゃ可愛いけど、そりゃ仲がいい兄妹でも、変な条件を出されても絶対に俺はお兄ちゃんとして変なことは妹にしない。うむ。妹の頭を撫でる。
立ち上がってジャンプしてみた。空は飛べなかった。また、このまま真っ直ぐに進んだらどうだろう? 利き足の影響でグルグル回って元に戻ってくるのかな。いや由愛が寝てるから単独行動は出来ない。フラグがたってしまう。先にちょっと進んだら壁に当たるかな? そこに偶然に出口はあるのか? 非常口ぐらい設置しておいてくれてもいいだろう。お化け屋敷にすら非常口はあるぞ。なっとらんなココ。管理責任者出てこい。
しかし独り言ばかりになっているが、いまだに何も変化はない。何か起きないと話が進まないのだが、なんだろう、この焦燥感は。俺は結構、異変なんかには鈍感というか起きた事象に対して度胸がある方だから、焦る事なんてない、今の焦燥感は全く想定外だ。神様は出てきても余裕で対処できる自信がある。女神さまなら尚オツケー。
そこまで思考すると……事態が動いた。
ひゅーーーーーん
由愛の頭を撫でていた俺は、妙な音と共に由愛の頭の中にすぅ~っと入っていった。まるで幽体が乗り移るかのように。ゆっくりと、スムーズに、由愛の頭の中に吸い込まれていった。俺の視覚は歪んだ。
そしてまるでリセットされたかのように俺の思考もまっさらになった。頭の中のスクリーンに何も映っていないような感じだ。
★★★★★
【由愛の夢の中】
散歩から由愛と一緒に家に帰ると、幼馴染で恋人でもある瑞葉からスマホで連絡があり、一時間半ほど後で家まで来るとのこと。それまで自由な時間ができた。
そして今、なぜか俺はネトラレというものについて考察していた。ベットに寝転び、それに付随する事も含めて思索にふけっている。
「寝取られの復讐って何があるかなぁ、考えつかないや。まだ俺って性癖が歪んでるのか? NTR自体が絶対に嫌だよ。なのに夢に出てきて可愛い恋人の瑞葉や大切な由愛を他人に奪われようとして喜ぶものか? 何故そんな夢を見たんだろう」
「それに復讐ってさ、未練やスリルを味わってるから別れずに浮気をするんだろ? だったら発覚したら直ぐに別れるのが一番の復讐だと思うんだよな。ホテルに入るところは映像で撮ればいいし、出てくる時なら映像を撮りながら二人に走って近づいて「お前らあのホテルから出てきただろ」って問えばやり取りで分かるだろうし、学校に提出すれば良くて停学、悪くて退学。直ぐにやるからこそ復讐もインパクトが大事、後にジワジワと間男・彼女を苦しめ反省させられると思うんだよな」
「じっくり作戦練ってというが、こっちの心の苦しみに負けちゃったら駄目だし、時間をかける方が何やかんやとリスクがあるよな。だって浮気を知ってて放置するって、復讐まで彼女が間男にキスされ抱かれ続けるんだぞ? 俺には耐えられない。すぐにでも別れるよな、うん」
「考え始めると奥が深いなネトラレってやつは」
「もし瑞葉が浮気していた場面を見てしまったとしよう。俺はどうする? 以前の時は夢の世界のせいで半狂乱だったが、今の現実世界では冷静だ。どうやって別れる? 別れないという選択はいくら好きな恋人でもないよな。メッセージ送って、もう会わない、学校では基本無視、というところか」
「間男に彼女がいたら共同戦線を張るか? いやないな。新たに付き合うというコースを設定しなければ無理。しかしだな、新しくなった彼女の顔を見るたび元彼の間男の顔が浮かぶし、いい雰囲気になった時ほど、思い出すんじゃないだろうか。間男彼女との共闘も無理だな」
……コンコン、コンコン……
「……」
【由愛の夢の中】
……コンコン
「お兄ちゃん、今時間ダメかな?」
「ああ、由愛か、入ってくれ」
ガチャ
黄色のカエルさんジャージ・バージョンの由愛が現れた。今回はパジャマではない。このジャージ、幼児体型が似合いすぎる。可愛すぎて危険だな。胸は可愛らしく盛り上がっているし。意外とお尻が大きくて安産型だな、お兄ちゃん驚いたぞ。
「ねぇ、お兄ちゃん、瑞葉ねえちゃんが来るまで時間あるでしょ、夕飯を作るのも今晩はお母さんが作ってくれるし、少し一緒に居たいな……」
「いいぞ、そこにお座り」
「ベットに腰かける」
「……分かった」
ごくり
「お兄ちゃん、何してたの?」
「あ、うん、俺の夢の世界について考察、思考をのばしてた」
「何か分かった?」
「うーん、寝取られってどうやったら復讐できるのかなーって」
「相手より幸せになるじゃダメなの?」
「幸せにか。それはアリだとは思うんだが、幸せになるってどうすればいいんだろう? 悩む」
「簡単だよ、愛し合えばいいんだよ」
「由愛は男子から迫られたら嫌と感じるか?」
「迫ってくる相手に拠るよ。一人の好きな……お兄ちゃん以外の男性は嫌」
「迫ってくるって抱き締めるという程度でも嫌なんだろうか? 質問の意味が分かりにくいか」
「当たり前だよ。抱き締められるって相当エッチな行動よ、好きな人以外はされたくないよ」
「そうか、そうだよな」
「それでね、だっこ。だっこして」
「えっ未だ暗くなったばかりの夕方だぞ」
「約束……」
「仕方ないな……約束だもんな……」
ベットに寝転んでいた俺は上半身を起こし、端に座る由愛の両肩を掴み、後ろに優しく引き倒した。由愛は緊張していたが素直にコテンと寝転んだ。彼女の顔が真っ赤になっていた。
「由愛、俺さ、さっき夢の世界のこと考えていたって言ったろ、主にネトラレの件なんだ。復讐はどうしたって即別れる方が良いとか、そんな程度の話。でさ、NTRって抱き締めるだけで寝取られになるのかな、キスとか、その先をしてないと成立しないんじゃなかろうか?」
「お兄ちゃん、哲学的っぽく真面目そうに話してるけど、ただエッチな話だよねソレ」
「あう」
「早くだっこして。約束」
俺は今どこにいるのか、何をやっていたのか混乱していたが、取り急ぎ由愛を抱き締めなければいけないようだ。さっき白い部屋で寝転んでいたような気もするが、それは後で検証しよう。
「由愛、いつもありがとうな。おかげで助かってるぞ」
「お兄ちゃんの役に立てたんなら嬉しいよ」
俺は由愛の髪をすきながら頭をなでる。そして弱点と判明した耳を触る。指を優しく入れてみるか。そして耳たぶを丁寧に揉んで息を吹きかけ、抱っこを継続、由愛も今回ばかりは掘り出しもんの家族ハグでノックアウトだな。
「あ、耳ダメっ! お兄ちゃん!」
「フフフ、これか、これか、フフフ……」
由愛の弱点を完全に把握した。耳とくれば次は首筋だな。耳の刺激のせいで目をしっかりと閉じた由愛は隙だらけであった。人差し指、中指を中心に首筋の産毛に触れるように手をスローに動かす。顎から頬に向かって優しく、とても優しくなぞっていく。決してイヤらしくしてはいけない。
「こんなのって……こんなの……いや……お兄ちゃんのばか……」
「フフフ」
力の抜けきった妹必殺の「お兄ちゃんばかっ」では俺は倒せんぞ、由愛。今回も俺の勝ちだ。可愛い由愛の顔を優しく愛撫し、心の底から愛しい気持ちで、リラックスして欲しいという気持ちを込めて愛撫を続ける。本当に由愛は可愛くて奇麗な顔をしている。それを自由に触れるだなんてお兄ちゃん冥利に尽きる。
「由愛、いいこ、いいこ、ナデコ、ナデコ……」
ぎゅっとするため背中へ腕を回すと、由愛が意外なリクエストを言ってきた。
「背中が痒い……ので、少し掻いて貰っていいかな……お兄しゃ…ん……」
夫婦のメリットで背中が痒い時にいつでも掻いて貰える、という事があげられると聞いたことがある。これかと。ジャージの中に手を入れ、背中を直に掻く。
「あれ? お前ブラつけてないんか?」
「……う、うん……そんなこと指摘しないで……」
「コリコリコリ……どの辺が痒いんだ?」
「右肩の肩甲骨のあたり、背骨の真っすぐな線に沿っても掻いて欲しいの……」
由愛の肌のぬくもりが手に直に伝わってくる。すべすべの肌だ。俺は由愛のリクエストに沿って背中を掻いたり揉んだり滑らせたりでマッサージしていく。
「いやん、好きな人に触ってもらえると嬉しく感じるんだぁ……あ……」
「そうか? そりゃ嬉しいな」
「そ、それでね、お兄ちゃん、そのままギュっとして、あ、そこ! あ、前の方は触っちゃダメぇ」
「分かった」
ぎゅぅぅ~~~~~~~
「あっ、だっ、だめっ、お兄ちゃん、らめぇぇぇーーーーっ」
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おっと、白い世界の部屋に戻ってきたぞ? 今のは何だったんだ? 由愛の夢の世界に入ってたのか? 隣には由愛が眠ったままだ。
「おい、由愛、おい、起きろ」
パチッ
「あ、お兄ちゃん、ま、まだ私達、早いわ。高校生だもん。だ、ダメ、駄目よ、兄妹でそんなにされたら私……お兄ちゃんに夢中になりすぎて死んじゃう……ば、バストトップだけは優しくお口に含むだけにしてね」
「何言ってるんだ由愛、目を覚ませ! 寝ぼけるな! 俺たちはリアルでは何もしていない!」
「え…………」



