薄紅が過ぎ、王都の空はまた灰の厚みを増していた。
結界炉は低く唸り、氷の回廊には朝一番の荷橇が並ぶ。蜂蜜の瓶、干した茸、毛皮の切れ端。どれも冬をやり過ごすためのささやかな部品で、部品を繋ぎ合わせるのが生き延びるということだ――と、人々は自分たちに言い聞かせるように、手を動かしていた。
その朝、鐘はやはり鳴らない。代わりに、祈りの声が街路に満ちた。
「氷に秩序を、火に節度を」
「輪に清廉を、路に正義を」
響きは単調で、単調さは安心を生む。けれど、その安心を誰が配っているかを、人々はあまり問わない。配るのが神官であれば、祈りは自然の延長になる。配るのが王であれば、祈りは政治になる。今朝の祈りは、前者の顔をしていて、後者の歯を持っていた。
氷教団の強硬派が、露台から“教え”を読み上げていた。
白布の袖が風に揺れ、雪に映える。神官長ヴァルナーは、いつもより声を低め、響きに重さを足している。言葉は古いが、意は新しい。
「冬は秩序を愛す。秩序は距離を要す。距離を乱すものは、冬の敵である」
「王は、巫女に心を寄せすぎる。心は距離を壊す。距離が壊れれば、冬は崩れる」
群衆の中の誰かが頷き、別の誰かが眉をひそめる。頷きとひそめるの比率は、季節の寒さや昨夜の鍋の具の量で時々変わる。冬は、小さな変動を好き勝手に増幅させる。
宮廷では、その頃、宰相と近衛長が短く言葉を交わしていた。
「露台の文言は、昨夜から変わっております」
「誰の許しで」
「陛下の許しではない」
沈黙。
「謁見の間の用意を。――陛下に、伝えよ」
セイグリムは、剣を帯びた。
彼が剣を抜くとき、音は出ない。鞘と鉄のあいだで生まれる摩擦のひそかな音を、彼はいつも指で殺す。音はときに、相手の恐怖ではなく、自分の恐怖を呼び起こすから。恐怖は路を乱す。乱れた路は、足を滑らせる。
謁見の間には、いつもの寒さに加えて、言葉の霜が張りついていた。
ヴァルナーは一段下がった位置に立ち、祈りの印を結ばない手で、白布の袖を整えた。整える仕草は、整っていないものを人に見せないための仕草だ。
「陛下。民のため、冬の規を正す必要がございます」
セイグリムは頷いた。「規は正す。具体を言え」
「巫女を“器”に戻すこと。王権による“個”への偏愛をやめ、火の供出を教団の管に戻すこと。――そして、王自らもまた、氷に従い、余計な温度をお持ちにならぬこと」
室内の空気が、薄く変わった。
余計な温度――それは「人情」を指す言葉だ。人情は冬の敵である、とヴァルナーは言外に宣言した。
セイグリムの指が、剣の柄から離れた。
「“余計”かどうかを、誰が決める」
「教えが」
「教えを、誰が読む」
「われらが」
「ならば、教えは君の舌と同じだ。凍るときは凍り、滑るときは滑る」
低い囁きが、左右の柱の陰で派生した。
ヴァルナーの目に、初めて感情らしき色が揺れた。怒りではない。確信の密度だ。彼は、ひとつ息をのみ、声を上げた。
「氷の王よ。あなたは“人情”に偏る。巫女という一個の命に肩入れし、火の秩序を乱した。孤児院に火を、炉の供出の抑制、氷の回廊の拙速な開削。――あなたのやり方は、『王』ではなく、『父』のやり方だ」
父。
その言葉は、冬の空より重く、謁見の間の石より冷たく、王の耳に落ちた。父であることは、罪ではない。だが王は、父である前に王であることを求められる。二つが逆順に呼ばれるとき、言葉は刃になる。
セイグリムはしばし黙り、ついで、静かに剣を抜いた。
刃は青く、刃の青は氷の青ではない。もっと鈍く、もっと人間に近い青だ。
「“王のやり方”は、私が決める。教団は助言できる。命ずることは、できない」
ヴァルナーの唇に、薄い笑いが乗った。
「ならば、民に問おう。広場にて」
◇
広場は、すでに白い波のように人で満ちていた。
露台の上にヴァルナー、反対側の段に王。その中央に、火の輪がいくつか点在している。灯璃は輪のひとつに手を置き、熱が弱まりすぎないように見張っていた。火は群衆の息を整え、息が整えば、怒りは一瞬だけ迷う。迷いは、言葉の入り口だ。
ヴァルナーは手を掲げ、声を張った。
「民よ。氷は秩序、火は奉仕。王は秩序を守り、巫女は奉仕を尽くす。――教えは古よりそう刻む。だがいま、王は巫女を“愛で”をもって囲い込み、奉仕の秩序を乱している。王は異端である」
“異端”。
その言葉は音が軽いのに、地の底まで響いた。
人々の間に波紋が走る。火を受けて楽になった肺が、また焦りを覚える。焦りは、早口を好む。早口は、耳を塞ぐ。耳が塞がれば、教えの声だけが残る。
灯璃は一歩、輪から前へ出た。
指先の煤が、今朝より濃い。王の部屋で名簿を作ってから広場へ降りるまでの短い時間にも、彼女はいくつかの火を渡してきた。燃やさずに済む輪の術は役に立つ。けれど、語の輪はまだ彼女に馴染みきっていない。彼女の火は、ときおり古いくせで、燃えようとする。燃えた火は、煤を残す。煤は、隠せない。
「話をさせてください」
灯璃の声は、太鼓の代わりに群衆に届いた。
ヴァルナーが初めてこちらを見る。目は笑っていない。彼の笑いは、いつも口元だけに宿る。
「巫女よ。君は“奉仕”を語るのか」
「奉仕は語りません。事実を、話します」
彼女は、手袋を外した。
指の側面、爪の脇、掌の丘――黒い薄い刺青のような煤が、広場の白に曝された。ざわめきが起きる。若い母親が子を抱き寄せ、老人が杖を握り直す。
「これが、火の代償です。燃やすほどに、濃くなります。私の寿命は、火を多く呼んだ日は少し短くなり、呼ばなかった日はそのままです」
彼女は続ける。声は揺れず、言葉は短い。
「――王は、私を燃やさせない」
空気が割れた。
「王は器ではなく、私を“人”として扱います。炉の供出は最小限に抑え、孤児院へは輪の術で温度を回すよう命じ、私が勝手に燃やした夜には、叱りました。私はその叱責で、初めて泣きました。悔しかったからです。けれど、いまは分かります。あれは、私を“奉仕の器”に戻さないための叱責でした」
群衆の顔の色が、ゆっくりと変わる。
怒りは簡単だ。理解は遅い。遅いものは、冬には不利だ。それでも、遅いものがなければ春は来ない。
ヴァルナーが声を上げた。
「君は、王を庇う。庇いは愛だ。愛は秩序を乱す」
灯璃は目を逸らさなかった。
「庇いは、距離の中にもあります。王は私に触れません。触れれば、凍らせるから。――距離は、愛の形でもあります」
彼女は振り返り、セイグリムを見た。
王は広場の反対側、段の上で、ただ立っていた。剣は鞘に納められている。手袋は外さない。外さない手で、人々の視線を受け止めている。受け止めることは、言葉よりも先にある責任だ。
誰かが叫んだ。
「王さま、言って! あんたの言葉で!」
叫びは粗く、善意と焦燥が同居していた。善意だけでは届かない。焦燥だけでも届かない。二つが一緒にあるとき、言葉はやっと、扉の前に立てる。
セイグリムは、段から降りた。
降りるという行為は、王にとってしばしば政治だ。たいていは示威であり、時には敗北の演出でもある。彼は何の演出もせず、ただ地面に足を置いた。雪が微かに鳴る。鳴った音は、彼の胸の中の音と同じ高さだった。
「私は、恐れていた」
最初の一言は、思っていたよりも軽かった。
「君を。――灯璃を」
群衆のどこかで小さなざわめきが起き、すぐやむ。名を呼ぶことは暴露に似て、時に卑近に流れる。だが、この一言の卑近さは、彼の背丈を縮めなかった。
「民を。そして、自分を――凍らせることを。私はそれを、恐れていた」
空気の密度が変わった。
言葉は空気の温度を変える。温度の変化は、理屈より早く、背中の筋肉をほどく。
「だから距離を選んだ。私の手は、触れれば奪う。ならば触れないで守るしかない。外套を投げる。角度をずらす。名簿を作る。路を編む。輪の端を見張る。――すべて距離の中の行為だ。抵抗に似て、臆病にも見える。私にもそう見える。私は、私の距離を、何度も憎んだ」
彼はほんの少しだけ笑い、すぐ消した。
「けれど、灯璃は言った。『距離の向こうでも、あなたの手は震えていた』と。私はその震えで、自分がまだ何かを守ろうとしているのだと知った。守るものが、人であるかぎり、距離は無くならない。距離は、責任の形だ。近づけるところまで近づき、近づけないところで止まる。その“止まる”を、私はこれからも間違えるだろう。だから、私は言葉で言う。間違えたら、言う。恐れているなら、言う」
沈黙。
沈黙のあとに、誰かが小さく笑った。泣きながら笑う音。笑いながら泣く音。
ヴァルナーが、露台から身を乗り出した。
「王は告白で民の心を掴むつもりか。言葉は火だ。火は人を熱し、やがて焦がす」
セイグリムは首を振った。
「火は巡らせる。灯璃が教えてくれた。燃やさずに渡す方法がある。――君の祈りもそうであるはずだ、ヴァルナー。祈りは人を縛るためにあるのではない」
露台の上で、白い袖が微かに震えた。
ヴァルナーはなおも声を張る。
「巫女は器。王は秩序。秩序は情を許さず、器は声を持たない。これが教えの骨だ。骨を削れば、身体は崩れる」
灯璃は、歩み出た。
「――骨の生え方は、人によって違います」
群衆が、彼女の方へわずかに寄る。
「私には、私の骨があります。火は私の骨を太くしも細くもし、煤はその骨の節に溜まります。私はそれを、私の速度で、持っていきます。誰かに命じられて、太くも細くもしません」
彼女は振り返らなかった。王を盾にしないためだ。
「教えは、私たちの“前”にあるものではなく、私たちの“間”に置くものです。間に置けば、熱が逃げません。――間に置かず、前に掲げると、風に吹かれて冷えます」
広場の空気が、割れたまま、薄く繋がった。
割れにくっつくように、小さな子の泣き声が響き、誰かがその背を撫でた。撫でる手の温度は、火の輪の温度に似て、巡りが早い。巡りが早い温度は、人を安心させる。安心は、扇動の反対側にある。
ヴァルナーは、露台の縁で一歩、引いた。
引いたのは退却ではない。仕切り直しだ。彼は民衆の反応を測り、白布の袖を整え、低く宣言した。
「本日の説法はここまで。――王の言葉を、記録する」
記録。
記録は、刃にも盾にもなる。
セイグリムは頷いた。「記すなら、私の言葉だけを記せ。灯璃への言葉は、私信だ」
広場に薄い笑いが走り、緊張がほんの少し崩れた。崩れ方は、崩れすぎではなかった。
◇
反乱という言葉は、石のように重い。
だがその日の「反乱」は、石を投げ合うのではなく、言葉と沈黙のせめぎ合いで一時、退いた。
夜、王宮の長い廊下を、風が細く通った。灯璃は窓辺に立ち、掌の輪を胸に当てた。輪は名を覚えている。覚えているものがあると、人は疲れていても、少しだけ眠れる。
廊の向こうから足音。セイグリムだ。彼は立ち止まり、距離を読み、手袋の内側で指を一度だけ開いた。
「きょうの言葉は、君に借りている」
灯璃は首を振った。
「借りではなく、分け合いです」
「そうだな」
立ち尽くす沈黙。沈黙はきょう、彼らの味方をした。沈黙に寄りかかったから、言葉が立った。言葉が立ったから、群衆は座った。座ったから、刃は抜かれなかった。
「ヴァルナーは退いたが、負けてはいない」
王が、現実を見せる声に戻った。
「教団の“骨”は古く、骨の髄は、寒さに強い。彼は次は別のところを突く。記録を武器にするだろう。私の“距離”の告白は、彼にとっても材料になる」
灯璃は頷いた。
「距離は、材料になります。でも、料理にもなります」
「料理」
「ええ。切って、煮て、味を見て、分ける。――あなたの距離は、料理です。生のままだと喉に刺さるから、言葉で火を通して、みんなで食べる。きょう、あなたはそれをした」
王は小さく笑った。
「……喉に刺さらないように、今度は蜂蜜も足そう」
「甘すぎると、咳が出ます」
「なら、塩を」
こういう冗談が言える夜は、多くない。
冗談は、疲れをほどく。
だが、ほどけすぎないように、彼らはすぐ現実へ戻る。
「灯璃。君の煤は、増えている」
彼の視線は、優しいだけではない。事実認識の精密さを伴っている。
「きょうは、燃やしていません」
「分かっている。――輪で熱を渡しても、君はわずかに削れる」
灯璃は視線を落とし、指の脇の黒を見つめた。
「私の名を輪に置いたぶん、火は輪に従います。けれど、輪はまだ新しい。新しい器には、新しい煤がつく」
「名は、取り戻せる」
「ええ。代わりに、別の名が要る」
彼は言葉を飲み込んだ。その“別の名”が何かを、いま口にするのは、早い気がした。早すぎる火は、布を焦がす。焦げは、残る。
窓の外、雪が音もなく降り始めた。
王は立ち去る前に、短く付け加えた。
「きょう、君は民の前で『王は私を燃やさせない』と言った。――私は、君が燃やすと決めたとき、止められないかもしれない。そのときは、言葉で止める。言葉で止まらなければ、距離で止める。距離でも止まらなければ、……私の手で、君を凍らせる」
灯璃は目を上げた。
「怖いことを言います」
「怖いことを言える場所が、王には必要だ」
彼は歩き去り、灯璃はその背に、言葉にならない合図を送った。合図は伝わらないかもしれない。伝わらなくても、輪の内側に残る。
◇
翌日から、広場の説法は調子を変えた。
ヴァルナーは、名指しの言葉を避け、代わりに「記録」を読み上げるようになった。
「王、距離を選ぶと述べる」
「王、恐れを告白する」
「巫女、代償を示す」
記録は冷たい。冷たいものは、長く持つ。長く持つものは、時を越えて刃になる。だが、記録を読む声もまた、時に人を眠らせる。眠りは刃を鈍らせる。鈍らせる間に、路が一本、通る。
王は、評議の公開を増やした。
倉の鍵の受け渡し、融雪水の順番、孤児院への配分、炉の出力――数字と手順を、人々の前で言葉にする。言葉にすることで、距離に火が通り、食べられるようになる。
灯璃は火の輪の置き方を町中に教え、少年たちは誇らしげに「輪番」を務めた。輪番は、冬の遊びになった。遊びは、政治より速く浸透する。浸透したものは、扇動より強い。
それでも、白い袖は街角の影で増えていた。
教団は、人の不安をよく知っている。蜂蜜が尽きた日、火の輪が間に合わなかった夜、病の咳が長引いた朝。そういう時刻に、白い袖はやってきて、祈りを置いていく。祈りは軽く、軽いものは寒さに舞う。舞うものは、人の目に入りやすい。
七日後、ヴァルナーは再び宮廷へ現れた。
謁見の間の扉の前で、彼は祈りの印だけを結び、袖を揃えて言う。
「王よ。あなたは“言葉”を得た。――それは良い。だが、言葉は雪解けにはならない」
セイグリムは、椅子に座らず、立ったまま返す。
「雪解けにするのは、人だ。私と、君と、灯璃と。祈りは手を導く。手が路をつくる」
ヴァルナーの目に、怒りではない、鋭い光が走る。
「巫女を“君”と呼んだ。王は、巫女に個人の呼称を与えた。――記録する」
彼は踵を返し、白い袖がゆるく翻る。
クーデターは、一昼夜で成らない。
反乱は、大声だけで起きない。
雪のように積もり、氷のように固まる。
ヴァルナーは、それを知っている。王も、灯璃も、いま学んでいる。
◇
夜、灯璃は孤児院の庭で、焚き火の輪を小さく保っていた。
輪の向こうで、子どもが本を読む。字は少ない。絵は多い。絵の白は、紙の白ではなく、雪の白に似ている。雪の白は、汚れやすい。汚れると、現実になる。現実になった白は、もう、単なる背景ではない。
「お姉ちゃん、王さま、こわい?」
子が訊いた。
「王さまは、こわい?」
灯璃は答えた。
「こわいときもあるよ。こわくないときもある」
「どっちが多いの」
「――いっしょくらい」
子は満足そうに頷き、絵の中の王に蜂蜜の飴を貼った。飴は紙にくっつき、絵の王はしばらく甘い香りになった。甘いものは、冬の夜に理屈を黙らせる。
帰り道、灯璃は広場を横切った。
露台は空っぽで、白い袖はなかった。火の輪が二つ、まだ薄く灯っている。彼女は輪の縁に触れ、熱の巡りを確かめ、わずかに足して、手を離した。
「灯璃」
背後から呼ぶ声。振り向けば、セイグリムが立っていた。
「名簿、続きがある」
彼は紙束を差し出し、灯璃は受け取った。紙の重さは、人数の重さではない。呼んだ名の重さだ。呼べなかった名の空白は、紙の白に残る。
「――ありがとう」
言いながら、灯璃は気づいた。きょう、彼に向けて「ありがとう」を何度言っただろう。言いすぎると、言葉は軽くなる。軽くなった言葉は、冬に舞う。舞う言葉は、冷える。
「ごめんなさい、言いすぎて」
「いい」
彼は首を振った。「きょうは、受け取る。明日は、受け取らない。交互にしよう」
交互は、冬の配分の基本だ。
交互は、呼吸の形だ。
呼吸の形を二人で決めるとき、距離は少しだけ、意味を変える。
雪が、また、音もなく降ってきた。
彼らは広場の真ん中で立ち尽くし、火の輪の間の沈黙に身を置いた。沈黙は、きょうを締める印であり、明日へ渡す輪だ。遠く、白い袖がどこかの路地でゆらいだ気配がした。反乱は沈んだわけではない。沈むふりをしている。浮くために。
それでも、今夜は退いた。
退いた夜に、言葉は少ないほうがいい。
灯璃は小さく息を吐き、輪にそっと触れた。
火は、燃えずに回る。
王は、距離を言葉に変える。
教団は、記録を刃にする。
冬は、長い。
けれど、長いものは、割って運べる。
その割り方を、彼らは少しずつ覚えていく。
覚えるたびに、煤が一本増えるかもしれない。
増える煤の黒を、彼女は隠さない。
黒は、光の形を浮かび上がらせるから。
黒のとなりで、王の青が、凍っては、ほどける。
ほどけた青は、言葉になる。
言葉は、輪になる。
輪は、人を、凍らせない。



