しばらく体が固まってしまい、動くことができずにいた僕は、ただ呆然と池に浮かぶルドルフを見つめているだけだった。
どれくらい時が経っただろう。
僕は池にゆっくりと入った。
彼の周囲を、水が波紋となって流れていく。
ぱちゃぱちゃという音がしたが、僕にはそのすべてが聞こえていなかった。
ルドルフの傍へ近寄ると、その腹の上にそっと手を置く。
冷たく、硬くなっている腹。
そして、翼のように広がった手に、己の手を重ねる。
僕が眠れない夜は、いつも傍に寝ているルドルフの手を握って眠っていた。暖かく、柔らかなその手は、今は冷たく硬くなっていた。
「ルドルフ……」
僕はルドルフを抱きしめる。水に濡れたルドルフは、驚くほど軽かった。濡れたドレスが含んだ水が、まだ濡れていなかった僕の体の箇所を濡らしていく。
「ルドルフ、ごめんよ。許しておくれ。ボクは君の事を何にもわかってあげられなかった。君はきれいだ。ドイツの街の、どんな女の子よりも、君はきれいだったのに」
熱い涙がまなじりから溢れて止まらない。
白い頬を濡らし、みどりの池に落ちていく。
物音が、何もしなかった。
ただ、僕の身を絞るような鳴き声だけが、美しい夏の中庭に響いていた。
僕は、あんなに綺麗な遺体を、その後何年経っても見ることはなかった。水辺に漂う白いドレス姿のルドルフは、まるでオフィーリアの絵画のようだった。草木は息吹き、は満開だというのに、ルドルフだけが死んでいた。僕と同じ顔。僕の片割れ。
どれくらい時が経っただろう。
僕は池にゆっくりと入った。
彼の周囲を、水が波紋となって流れていく。
ぱちゃぱちゃという音がしたが、僕にはそのすべてが聞こえていなかった。
ルドルフの傍へ近寄ると、その腹の上にそっと手を置く。
冷たく、硬くなっている腹。
そして、翼のように広がった手に、己の手を重ねる。
僕が眠れない夜は、いつも傍に寝ているルドルフの手を握って眠っていた。暖かく、柔らかなその手は、今は冷たく硬くなっていた。
「ルドルフ……」
僕はルドルフを抱きしめる。水に濡れたルドルフは、驚くほど軽かった。濡れたドレスが含んだ水が、まだ濡れていなかった僕の体の箇所を濡らしていく。
「ルドルフ、ごめんよ。許しておくれ。ボクは君の事を何にもわかってあげられなかった。君はきれいだ。ドイツの街の、どんな女の子よりも、君はきれいだったのに」
熱い涙がまなじりから溢れて止まらない。
白い頬を濡らし、みどりの池に落ちていく。
物音が、何もしなかった。
ただ、僕の身を絞るような鳴き声だけが、美しい夏の中庭に響いていた。
僕は、あんなに綺麗な遺体を、その後何年経っても見ることはなかった。水辺に漂う白いドレス姿のルドルフは、まるでオフィーリアの絵画のようだった。草木は息吹き、は満開だというのに、ルドルフだけが死んでいた。僕と同じ顔。僕の片割れ。



