䌚合の日がやっおきた。䌚堎には日本を代衚する䞀流䌁業の゚リヌトたちが集たっおいた。鉄道、車䞡、建蚭、鉄鋌、電線、機械、運茞、船舶など、軌道倉曎や穀物茞送に関わる䌁業が揃っおいた。それだけでなく、政府系金融機関の職員たで出垭しおいた。それは、政府を巻き蟌むこずを前提ずしおいるこずを意味しおいた。

 進行圹を務める同期に促されお倭生那は壇䞊に立った。緊匵しおちょっず声が震えたが、オデヌサでミサむル攻撃を目の圓たりにしたこず、その危険な堎所で劻が掻動しおいるこず、珟地では穀物が出荷できないため困り果おおいるこず、鉄道で代替しようにもEUず軌道が違うので簡単にはいかないこず、曎に、茞出ができないためにアフリカや䞭東の囜々で食糧事情が急速に悪化しおいるこずを説明した。その埌、いく぀かの質問があり、曎に詳しい状況説明をしたあず、同期に匕き継いだ。
 壇䞊に立った圌は、こめかみに力が入っおいるような匕き締たった衚情で、凛ずした声を発した。

「䞀䞖䞀代の挑戊になりたす。ビゞネスチャンスずいうだけではなく、極めお意矩のある貢献になるのです。しかし、戊争の終結時期は芋通せず、い぀から取り掛かれるのか、必芁な資金はどれほどなのかなど、事業化に向けお必芁ずされる情報はほずんどないず蚀っおも過蚀ではありたせん。それでもやる䟡倀は高いず確信したす。悪意によっお螏みにじられたりクラむナを救うこずは新たな秩序を䜜り䞊げるこずに他ならないからです。そう思いたせんか」

 そしお参加者を芋回しおから、キメの蚀葉を発した。

「これは単なる埩興に向けた取り組みではなく、悲痛な叫び声をあげ続けおいるりクラむナの人々に倢ず垌望を䞎える『光明(こうみょう)プロゞェクト』なのです」

        

 2週間埌に第2回䌚合が行われ、各瀟が持ち寄った情報を項目毎に敎理し、分析を行った。
 それが凄かった。日本を代衚する䌁業ずその粟鋭だけあっお無駄がたったくないのだ。それは第1回䌚合でプロゞェクトの意矩を共有できたこずによるものだず思われたが、圌らの胜力の高さを蚌明するものでもあった。

 分析の結果、戊争終結時期を①1幎埌、②2幎埌、③3幎埌ずしおシミュレヌションを始めるこずになった。たた、日本だけの䌁業連合ではなく、欧米を巻き蟌んだ囜際䌁業連合ずする方向性が打ち出された。曎に、倚囜間政府融資の実珟に向けお働きかけを行うこずも合意された。
 しかし、軌道倉曎に぀いおは厳しい意芋が盞次いだ。珟実的ではないずいうのだ。埓来の線路を眮き換えるには莫倧な費甚ず期間がかかる䞊、運行を長期間停止する必芁があるため、华っお埩興ぞの足枷(あしかせ)になるずいう意芋が倧勢を占めた。それらを聞いお心は重く沈んだが、鉄道䌚瀟から新たな提案が出されるず、救われたような気持ちになった。その人は「りクラむナの銖郜キヌりずポヌランドのクラクフ間で運行されおいる軌道可倉電車の拡充が費甚的にも期間的にも珟実的である」ず蚀ったのだ。

 軌道可倉電車ずいうのは、異なる軌道を盎通運転させるためのシステムで、走行する軌間に合わせお車茪の巊右間隔を倉換するものであり、既にペヌロッパでは䞀郚運行されおいるずいう。䜆し、動力を有しない貚客車での実甚化に限られおおり、電車においおはただ実甚化されおいないずいう。そこで、珟圚開発が䞭断しおはいるが、九州新幹線の西九州ルヌトで採甚する方針だった技術を掻甚すればいいのではないかずいうのだ。

「日本の堎合、圚来線の1,067ミリずいう狭軌から新幹線の1,435ミリずいう暙準軌ぞ368ミリも倉換しないずいけないため開発が難航したのですが、りクラむナず欧州の間ではその差が85ミリしかないため難易床はかなり䜎くなるものず思われたす。それに、日本が動力車を提䟛しお、貚客車をポヌランドが提䟛するようにすれば、りクラむナ難民を党面的に支揎しおきたポヌランドの貢献にも報いるこずができるようになるず思うのです。いかがでしょうか」

 圌が蚀い終わるなり、䌚堎から倧きな拍手が沞き起こった。それは、このプロゞェクトを前に進めるための匷力な起爆剀が点火したこずを衚すシグナルのように思えた。

        

「お前のネットワヌクは半端ないな」

 䌚合が終了しお䌚瀟に戻った時、倭生那は同期の肩を揉んだ。

「たあ、結構、皮を蒔いおきたからな」

 満曎でもないずいうふうに笑みを浮かべたが、すぐに匕き締たっお、「これから现郚を詰めおいっお幎内を目暙に蚈画の基本骚栌をたずめようず思う。それができたら瀟内ぞの根回しを始める。そうなったら忙しくなるぞ」ず目を现めた。
 頷きを返すず、䞍意にナタヌシャの顔が浮かんできた。あの時䞀方的に話を終わらせた圌女だったが、心底ではなんずかしおもらいたいず期埅しおいるに違いない。朗報を埅っおいるに違いないのだ。

 必ずなんずかするから。

 芚悟を呟きに蟌めお、オデヌサの方角に目を向けた。