倜が明けた時、ミハむルが運転する車はオデヌサの垂街地から20キロの所で止たっおいた。倜通し運転しおいたミハむルにかなりの疲れが芋えたので、無理矢理䌑憩を取らせたのだ。

 15分ほど䌑んだのち、運転を代わるこずを申し出たが、ミハむルは受け入れなかった。巊ハンドル車を運転したこずがない者には無理だず突っぱねられた。それでも代わろうずするず、事故でも起こしたら今たでのこずがフむになるず硬い衚情で撥(は)ね぀けられた。

「倧䞈倫です。あず30分もあれば着きたすから」

 任せおおけずいうように圌はハンドルを握った。

        

 街䞭に入るず、早朝だずいうのに公園に人が集たっおいた。芋るず、軍事蚓緎をしおいるようだった。それを芋お、戊時䞭だずいうこずが思い起こされた。そうなのだ、平時ではないのだ。自らに蚀い聞かせおいるず、ミハむルが車を止めおナビを確認した。

「あず23分だず思いたす」

 ナビを指差すのを芋お、劻の顔が思い浮かんだ。もうすぐ察面できるのだ。䌚ったら思い切り抱き締めたいず思った。
 しかしその時、頭䞊で蜟音が鳎り響いた。それがミサむルだず確認したのも束の間、倧きな爆発音が聞こえた。そしおすぐに濃い灰色の煙が立ち䞊った。それは、これから向かおうずしおいる方角だった。

 ミハむルず目が合った。圌の目は恐怖に満ちおいるように芋えた。それでもすぐに前を向いお車を急発進させた。タむダが軋む音を残しお目的地に急いだ。

        

「ああ」

 ミハむルの絶叫ずずもに車が止たった。2発目のミサむルが頭䞊を飛び越えおすぐに着匟したのだ。さっきずは比べ物にならないほどの爆発音が聞こえたあず、炎が䞊がった。
 倧きな建物が燃えおいた。物凄い炎がこれでもか(・・・・・)ずいうように燃え盛っおいた。蟺りに人はいなかったが、建物は䜓育通のようであり、劻が働くボランティア䌚堎に違いなかった。

「ナタヌシャ」

 叫びながら車を飛び出したが、ミハむルに腕を掎たれお止められた。目の前には巚倧な炎の壁が立ちはだかっおいた。

 ナタヌシャ  、

 倩を仰ぐ倭生那の目から涙が溢れた。目の前には砎壊されお燃え䞊がる建物があるだけだった。人間の姿は圱も圢もなかった。2発のミサむルにやられおしたったのだ。どんな屈匷な人間でも生き残れる蚳はなかった。立ち尜くしおいるず、サむレンの音が聞こえた。消防車だった。到着するず続いおもう1台が続き、すぐに消火掻動が始たった。しかし、猛烈な火の手を抑えるこずはできず、攟氎を嘲笑うかのように炎が立ち䞊った。

 呆気に取られお芋おいるず、いきなり屋根が厩れ萜ちた。地面にぶ぀かるず、蜟音ず共に砎片が呚りに飛び散った。咄嗟(ずっさ)に飛びのいたが、「あっ」ずいう声が暪から聞こえた。ミハむルだった。足を抌さえお倒れおいた。

「倧䞈倫ですか」

 かがみこんで芋るず、圌の足から血が出おいた。飛んできた砎片にやられたようだった。すぐにゞヌパンのポケットからハンカチを取り出しお出血しおいる郚䜍にき぀く巻き付け、「誰か」ず消防隊員に向かっお叫んだ。するず、ホヌスを持っおいない隊員が小走りに近寄っおきた。英語は䌝わらなかったが、ミハむルが怪我をしおいるこずは理解したようで、怪我をした足を持っお高く䞊げた。心臓よりも高い䜍眮にするこずによっお出血を抑える぀もりなのだろう。
 消防隊員が䜕かを蚀った。よくわからなかったが、代わっおくれずいう感じだったのでミハむルの足を持぀ず、消防服のポケットから䜕やら取り出した。ガヌれのようだった。出血郚䜍に巻いおいたハンカチを解いお傷口にガヌれを圓おるず、その䞊から包垯を巻いお曎にテヌプを巻いお傷口を芆った。それで応急凊眮が終わったようだった。圌はそのたた足を持っおいおくれずいうような手振りを残しお、消防車に乗り蟌んだ。

 圌が連絡しおくれたのだろう、少ししお救急車が到着した。ミハむルず共に倭生那も乗り蟌み、おきぱきず行われる救急措眮を芋守った。

        

 救急サむレンが止むず共に車が停たった。病院に到着したようだ。しかし、そこは病院ず蚀える代物ではなかった。物は敎理されおおらず、玄関や廊䞋にたでベッドが眮かれお雑然ずしおいた。それに、医垫や看護垫が走り回っおいた。医療関係者の数が足りないのだろう。圌らの緊迫した様子を芋おいるず、たるで戊堎のように思えた。

 ミハむルの傷は深そうだった。瞫合(ほうごう)が必芁だず英語が話せる医者に蚀われた。でも、手術宀が空いおいなかった。負傷者が続々ず運び蟌たれおいお4人が埅機状態だずいうのだ。䞀刻も早く瞫合手術をしお欲しかったが、埅぀以倖遞択肢はなかった。

 倕方になっおやっず順番が回っおきた。ミハむルはかなり憔悎(しょうすい)しおいるようだった。出血は完党には止たらず、包垯を赀く染めおいたから無理もなかった。声をかけお芋送った倭生那だったが、萜ち着かなかった。この蚭備でこの陣容で手術が成功する確率が高いずは思えなかったからだ。それでも、できるこずは祈るこずしかなかった。