ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

私は化け物だ。人殺しだ。誰からも必要とされていない。

ましてや、こんな私を愛してくれる者なんていないだろう。そう勝手に決めつけて、心を閉ざしていた。

しかし、あいつはそんな私の冷え切った心を溶かしてくれた。

「……あいつは物好きなんだよ。こんな……私を好きになるなんて、どうかしている」

「そうでしょうか? わたくしは、コスモスさんは人を見る目がある方だと思っています。だって、あの方はずっとサファイアの側にいてくれたじゃないですか。わたくしたちでは気づけなかった、ほんの些細なあなたの変化も、彼だけは決して見逃さなかった」

エクレールの言う通り、あいつはうざいほど私の側にいた。

私が苛立っている時も、怒っている時も、寂しいと感じた時も、悲しい時も。

そして――誰かに愛されたいと初めて思った時も、隣を見れば必ずあいつがいた。

歯を見せて嬉しそうに笑い、私を勝手に「サファ」と呼ぶあいつは、いつしか私にとって大切な存在になっていた。

「……認めたくなんてないな」

「えっ?」

エクレールを置いて、私は先に歩き出した。

あいつを好きだなんて認めたくない。早く会いたいだなんて認めたくない。

それでも、ふとした瞬間にあいつの気配を探している今の私は、好きだと告げてくれたあいつと、何も変わらないのかもしれない。

「エクレール」

「はい」

私は振り返り、少しだけ寂しそうな表情を浮かべて告げた。

「私は……あいつに会いたいよ」

ああ……そうだ。

私はあいつに会いたい。一日でも早く、あいつに会いたいんだ。


☆ ☆ ☆


「くしゅん!」

「っ! レーツェル!」

ヴァリス・エテルニタスへ向かう道中、森の中で野宿することになった私とアムール様は、天幕を張り、焚き火に使う木の枝を集めていた。

しかし、この辺りの夜風は少し肌寒く、思わず小さなくしゃみが出てしまった。

それを見たアムール様は、慌てて私のもとへ駆け寄ると、赤紫色のマントを肩にかけてくれた。

「今夜は冷えるから、これを羽織っててくれ」

「ありがとうございます、アムール様。きっと、エクレールが私たちの話をしているのかもしれません」

「あ~……あいつならあり得るな」

アムール様はそう言うと、何か心当たりがあるのか、少し頬を赤らめながら頬をかいた。

もちろん、私も同じことを思い出し、ふふっと小さく笑った。

「今夜は火の番はアムール様ですよね?」

「あぁ、そうだけど?」

「では、少しアムール様の隣でお話ししていてもいいですか?」

私がそう尋ねると、アムール様は真剣な表情を浮かべた。

「だめだ」

きっぱりと言い切るその姿に、私は驚いて目を見開いた。

「今のお前の体は……万全じゃないんだ。またいつ体調が悪くなるか分からないだろう?」

「それは……」

その言葉に、私は申し訳なさを感じて顔を伏せた。

ここ数百年、私の体は時折、原因不明の不調に襲われていた。ひどい時には一日中寝込んでしまうこともあれば、貧血で倒れたり、食事をしても吐き気に襲われ、吐いてしまったりすることもあった。

ブラッドやアムール様は、私のために原因を知っていそうな医師や魔道士たちを訪ねて回ってくれた。

それでも今日に至るまで、私の体調不良の原因は分からないままだった。

ブラッドは、パートナーであるオフィーリアから魔力を供給されていないせいで、私の魔力が不安定になっているのかもしれないと仮説を立ててくれた。

そのため、今は定期的にアムール様から魔力を分けてもらっている。そのおかげか、ここ数日は体調も少し安定していた。

私がオフィーリアではなく、新しいパートナーを見つければ、この問題は解消されるのかもしれない。

しかし、私はオフィーリア以外の人をパートナーに選びたくなかった。

だって、あと少しでオフィーリアにもう一度会えるかもしれないのだから。

けれど……私の体調不良のせいで、ブラッドの目的である「虹の花」の捜索が遅れてしまっている。

そのことを申し訳なく思っているのも、また事実だった。