ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

すると、エルさんはにっこりと微笑んだ。

「サファイア、わたくしを誰だと思っているんですか?」

「うっ……!」

その言葉に、サファイアは思わず苦い表情を浮かべた。

そんな二人の様子を、私たちは不思議そうに交互に見つめた。

「わたくしは光国の第一王女、そして『光の巫女』と呼ばれておりました。民たちを導く立場として王政を担い、王都にも足を運んでは、人々がどのような暮らしを送っているのか、この目で確かめてきたのです。もちろん、それは魔剣として目覚めてからも変わりません。この世界の成り立ちや歴史、法律、金銭に関することなど、必要な知識を身につけるため、わたくしなりに努力を重ねてまいりました」

エルさんは誇らしげに胸を張りながら語った。

「じゃあ、その金はお前が直接稼いだものなのか?」

サファイアが尋ねると、エルさんは少し考えるような仕草を見せた。

「そう……ですね。この世界で稼いだわけではありませんが、あちらの世界でわたくしが所有していた個人的な資金を、エーデルがこちらの世界に来てからも大切に保管していてくれたのです。それを換金屋に持ち込み、交渉したうえで、こちらのお金に換えてもらいました」

彼女の口から語られたのは、私たちの想像を超える行動力だった。

その話に、私たちはそろって言葉を失った。

一方、サファイアは呆れ果てたように額に手を当て、深々とため息をついていた。

「な、なんちゅう行動力だよ……」

ロキが呆気に取られた様子で呟いた。

「さ、さすがエクレール様……」

カレンも感心したように声を漏らす。

私とアレスも顔を見合わせ、苦笑するしかなかった。

エルさんは、この世界の成り立ちや歴史、法律、金銭に関する知識を身につけたと言っていた。けれど、彼女が魔剣として目覚めてから、まだ一ヶ月ほどしか経っていない。

つまり、エルさんはたった一ヶ月の間に、今話してくれたことを成し遂げたということになる。

改めて考えてみると、とんでもない行動力だった。

「あ、そうですわ。実はわたくし、ちょっとした事業を始めようと思っておりまして」

「はぁ?!」

サファイアが驚いたように声を上げる。しかし、エルさんはそんな彼女の反応など気にも留めず、にこやかな笑みを浮かべたまま言葉を続けた。

「まだ準備を始めたばかりですから、本当にちょっとしたものですわ」

「……ちなみに、何を始めるつもりだ?」

「商会ですわ。人々の暮らしに必要な品を、必要としている方々へ届けるための」

「待て。お前、いつの間にそんな話を進めた?」

「もちろん、目覚めてすぐにですわ」

目覚めてすぐって……。

「ですので、王都の中を少しばかり見て回りたいのです。どのような商会があり、どのように商売を行っているのか」

「え、ええっと……」

エルさんは今後の行動までほとんど決めているらしく、淀みなく言葉を続けていく。

サファイアさんは深々とため息をつきながら、腕を組んだ。

「止めようとしても無駄だ。こいつの行動力は、あっちの世界にいた頃から誰にも止められるようなものじゃなかった。逆に、それに助けられたこともあるしな」

確か、リヴァイバルさんと会ったときも、エルさんは一人で魔人族を探しに出ていたんだよね?

一国のお姫様が、誰にも告げずに勝手に国を出て旅に出たと知られたら、国中が大騒ぎになっていただろうな。

そう考えると、エルさんの行動力は、私が思っている以上にすごいのかもしれない。