ヴェルト・マギーア ソフィアと魔道と剣戟の勝利者

「お~い! カレン!」

改札口の向こうから、私とサファイアの姿に気づいたロキが片腕を高く上げ、大きく手を振ってきた。

その隣には、アレスとソフィア、そして人間の姿になったエクレール様の姿もあった。

エクレール様はソフィアの腕に自分の腕を絡めながら、瞳を輝かせて周囲をきょろきょろと見回している。きっと、彼女にとっては、目に映る景色の一つひとつが新鮮なのだろう。

「あっ! サファイア~!」

エクレール様も私たちに気づくと、嬉しそうにサファイアへ向かって小さく手を振った。

対するサファイアは、重々しくため息をつきながらも、渋々といった様子で手を振り返した。

ロキたちがちょうどいいタイミングで声をかけてくれたおかげで、クリオスの話をこれ以上サファイアに追及されずに済みそうだ。

私は内心でほっと胸を撫で下ろしながら、彼らのもとへと一歩踏み出した。


☆ ☆ ☆


カレンと合流した私たちは、彼女の案内で駅を出ると、近くのレストランに入って昼食を取ることにした。

私たちは六人掛けのテーブル席に案内され、私とアレス、エルさんが一方に、カレン、サファイア、ロキが向かい側に座った。もちろん、私の右隣はエルさんだ。

席に着いた私たちは、それぞれメニューを開き、何を注文しようかと悩み始めた。

さすがは王都というべきか、見たこともない料理がたくさん並んでいる。どれも美味しそうで、目移りしてしまうほどだった。

「どれも美味しそうですね。サファイアはどれにするか決めましたか?」

エルさんが向かい側のサファイアに尋ねると、彼女はメニューに目を落としたまま、素っ気なく答えた。

「何だっていい」

「では、わたくしの方で決めてしまってもよろしいのですね?」

「なんでお前が勝手に決めるんだ……」

「だって、何だっていいとおっしゃったのはサファイアですよ?」

ニコニコと笑顔を浮かべながら告げるエルさんに、サファイアは反論しようとして口を開きかけたものの、結局は諦めたようにメニューを手に取った。

そして、掲載されている料理を一つひとつ目で追っていくと――

「……たっか」

小さく、そう呟いた。

そんなサファイアの隣では、同じくメニューに目を通していたロキも、顔を青くしていた。

「さすが王都だな……」

そう呟きながら、彼は信じられないものでも見るかのようにメニューを見つめている。

確かに、私たちが暮らしている街とは違い、王都の物価は一段と高い。メニューに並ぶ料理の値段も、思わず目を疑ってしまうほどだった。

すると、エルさんが小さく手を挙げた。

「皆様にご提案なのですが、ここはぜひ、わたくしにお支払いさせてください」

「えっ!?」

突然の申し出に、私たちは揃って驚きの声を上げた。

「わたくしは、魔剣として目覚めてからまだ日が浅いです。しかし、目覚めてから初めて皆様と旅をし、こうして同じテーブルを囲んで食事を共にすることができています。どうか、この喜びへの感謝を、少しでも皆様にお返しさせてください」

「で、でも、エクレールさん、お金って……」

アレスが心配そうに苦笑すると、エルさんは自信たっぷりに答えた。

「大丈夫です!」

そう言うと、エルさんは左手首に装着していた携帯型魔道具を起動させた。

すると、魔道具の画面にエルさんの所持金額が表示され、私たちにも見えるように掲げられた。

画面に映し出された金額を目にした私たちは、揃って目を大きく見開いた。すると、サファイアが慌てて身を乗り出し、魔道具の電源を切った。

「おい、エクレール! お前、こっちの世界の金銭感覚を分かっているのか!?」

サファイアは呆れたように声を上げた。

「え? ですが、わたくしは皆様に感謝の気持ちを――」

「そういう問題じゃない! あっちとこっちじゃ、何もかもが違うんだぞ!」

エルさんの言葉を遮り、サファイアは深々とため息をついた。