「そうですか。カレン様のことが気になり、いつ声をかけようかと様子を窺っていた殿方たちを追い払っておりましたので、護衛……あるいは用心棒かと思いました。もし、私の言動で不愉快な思いをさせてしまったのでしたら、ご容赦ください」
表情ひとつ変えず、淡々と言葉を紡ぐシルヴィア。その姿は、こうした場面にすっかり慣れているかのようだった。
その完璧な態度が、かえってサファイアの苛立ちを煽っているように見える。
さすがにこのままではまずいと思った私は、二人の間を取り持つように口を挟んだ。
「えっと、紹介しますね、シルヴィア。この人は、私の魔法のお師匠様です。名前は……サファです」
咄嗟に口をついて出たのは、「サファ」という名前だった。
それは、サファイアと契約した時に流れ込んできた記憶の中で、彼女に星空を見せてあげたいと語っていた男性が口にしていた名前だった。
私に「サファ」と呼ばれたサファイアは、少し驚いたような表情を浮かべた。
「そして、サファ先生。こちらは私の従妹にあたるシルヴィアです」
私が紹介すると、シルヴィアは今度はサファイアに向き直り、完璧な所作でカーテシーをしてみせた。
それを受けて、サファイアはじっとシルヴィアの顔を見つめた。
「あぁ……だから気に食わない顔をしているんだな」
またしても、場の空気を凍りつかせるような一言が飛び出した。
その言葉は、駅構内の空気さえ氷点下まで下げてしまいそうなほど鋭く、私の背筋に冷たいものが走る。
私は慌ててサファイアに近づき、シルヴィアには聞こえないよう、必死に耳打ちした。
「さ、サファイア! シルヴィアに冷たく当たるのはやめてください!」
私の切羽詰まった様子に、サファイアもさすがに言いすぎたと思ったのか、煩わしそうにちらりとシルヴィアを一瞥した。
そして、大袈裟なほど深々と溜息をつく。
「分かったよ」
渋々ながらも、サファイアは承諾してくれた。
その様子を見ていたシルヴィアは、静かに私の視線を受け止めた。サファイアの態度を気にしている私の心情を察しているようだったが、本人はまったく動じていない。
「カレン様。もし、私への態度について気にされているのでしたら、どうぞお気遣いなく。元より、他人からどう思われようと些細なことです」
シルヴィアは、サファイアの暴言などまるで気にしていないかのように、穏やかな口調で続けた。
その言葉に、サファイアは何かが癪に障ったらしい。
組んでいた腕に力が入り、その背後には、目に見えない怒りの炎がゆらゆらと燃え上がっているようだった。
サファイアは「フン」と鼻を鳴らすと、今度こそ完全にシルヴィアに背を向けてしまった。
い、一体なんなのですか、この二人の間に流れる尋常ではない空気は……。
私が内心で困惑していた、その時だった。
「ところで、カレン様」
シルヴィアは、張り詰めた空気など存在しないかのように、真剣な口調へと切り替えた。
「お母様から、カレン様がエテルナの審判に参加されると伺いました」
その真剣な声音に意識を引き戻された私は、一度咳払いをしてから答えた。
「はい、その通りです。神剣学院から招待状をいただきました」
「そうですか。実は私も、今回のエテルナの審判に参加しようと思っております」
シルヴィアの青紫色の瞳に、確固たる意志の光が宿る。
「そうだったんですね。では、神剣学院の学院長であるお母様を持つあなたと、直接手合わせできるんですね」
表情ひとつ変えず、淡々と言葉を紡ぐシルヴィア。その姿は、こうした場面にすっかり慣れているかのようだった。
その完璧な態度が、かえってサファイアの苛立ちを煽っているように見える。
さすがにこのままではまずいと思った私は、二人の間を取り持つように口を挟んだ。
「えっと、紹介しますね、シルヴィア。この人は、私の魔法のお師匠様です。名前は……サファです」
咄嗟に口をついて出たのは、「サファ」という名前だった。
それは、サファイアと契約した時に流れ込んできた記憶の中で、彼女に星空を見せてあげたいと語っていた男性が口にしていた名前だった。
私に「サファ」と呼ばれたサファイアは、少し驚いたような表情を浮かべた。
「そして、サファ先生。こちらは私の従妹にあたるシルヴィアです」
私が紹介すると、シルヴィアは今度はサファイアに向き直り、完璧な所作でカーテシーをしてみせた。
それを受けて、サファイアはじっとシルヴィアの顔を見つめた。
「あぁ……だから気に食わない顔をしているんだな」
またしても、場の空気を凍りつかせるような一言が飛び出した。
その言葉は、駅構内の空気さえ氷点下まで下げてしまいそうなほど鋭く、私の背筋に冷たいものが走る。
私は慌ててサファイアに近づき、シルヴィアには聞こえないよう、必死に耳打ちした。
「さ、サファイア! シルヴィアに冷たく当たるのはやめてください!」
私の切羽詰まった様子に、サファイアもさすがに言いすぎたと思ったのか、煩わしそうにちらりとシルヴィアを一瞥した。
そして、大袈裟なほど深々と溜息をつく。
「分かったよ」
渋々ながらも、サファイアは承諾してくれた。
その様子を見ていたシルヴィアは、静かに私の視線を受け止めた。サファイアの態度を気にしている私の心情を察しているようだったが、本人はまったく動じていない。
「カレン様。もし、私への態度について気にされているのでしたら、どうぞお気遣いなく。元より、他人からどう思われようと些細なことです」
シルヴィアは、サファイアの暴言などまるで気にしていないかのように、穏やかな口調で続けた。
その言葉に、サファイアは何かが癪に障ったらしい。
組んでいた腕に力が入り、その背後には、目に見えない怒りの炎がゆらゆらと燃え上がっているようだった。
サファイアは「フン」と鼻を鳴らすと、今度こそ完全にシルヴィアに背を向けてしまった。
い、一体なんなのですか、この二人の間に流れる尋常ではない空気は……。
私が内心で困惑していた、その時だった。
「ところで、カレン様」
シルヴィアは、張り詰めた空気など存在しないかのように、真剣な口調へと切り替えた。
「お母様から、カレン様がエテルナの審判に参加されると伺いました」
その真剣な声音に意識を引き戻された私は、一度咳払いをしてから答えた。
「はい、その通りです。神剣学院から招待状をいただきました」
「そうですか。実は私も、今回のエテルナの審判に参加しようと思っております」
シルヴィアの青紫色の瞳に、確固たる意志の光が宿る。
「そうだったんですね。では、神剣学院の学院長であるお母様を持つあなたと、直接手合わせできるんですね」



