『REI&REIKA』
それが麗華が組んだバンドの名前だった。もちろん、REIKAは名前から取ったもので、REIは木暮戸令の令から取ったものだった。そう、同じ大学に入った令とバンドを結成したのだ。
令とは高校2年で同じクラスになって、ちょっと気になる存在になった。長身長髪で甘いマスクの彼は目立っていたし、英語の発音がネイティヴそのものでカッコイイなって思った。カラオケで『ビフォー&アフター』の曲を歌った時は、そのハスキーな歌声にかなり惹かれた。
高校3年生になって付き合うようになって、彼の第1志望が芸能大だと知った。中途半端に終わった父親の夢を自分が果たしたいと語る彼の真剣な顔はキラキラ光っていて、本当に素敵だった。
だからか、それまでの志望は音大でピアノを専攻することだったが、彼と一緒に芸能大に行くのもいいなって思い始めた。でも、音大も捨てがたいしどうしようかと思っていた時、父親がスナッチだとわかって、心が決まった。蛙の子はやはり蛙だった。
入学後は作詞作曲専科で理論を学びながら課題をこなしていって、少しずつオリジナル曲を増やしていった。そして、ある程度曲が貯まったところでバンドを結成して、学園祭を中心に活動を始めた。
でも、バンドといっても形態がちょっと変わっている。ピアノと歌が麗華で、ギターと歌が令なのだが、スピーカーから流れる音にはドラムやベースの音も入っているのだ。
何故そんなことができるのかというと、技術に詳しい令がプログラミングをしているから。それは業界用語で〈打ち込み〉と呼ばれているもので、いくつもの楽器を重ねていくと、例え実際に演奏しているのが2人であっても多人数で演奏しているような音を再現できる仕組みになっている。
そんな中、びっくりするようなことがあった。女子大のイベントで演奏し終わって、楽屋で反省会をしていたら、そこそこ知られているレコード会社の人が訪ねて来て、うちからデビューしないかと言われたのだ。
いきなりだったので驚いたが、その気はないのでやんわりと断った。しかし、その人は諦めなかった。REI&REIKAは結構人気があるとかなんとか褒め倒されて、尚も口説かれた。
確かに令はカッコ良くてクールだから女の子にキャーキャー言われていたけど、人気の秘密はそれだけではないという。麗華も男子学生に物凄く人気があると言うのだ。更に、「君のルックスは最高だし、スタイルも抜群だし、その歌声はミルキーヴォイスだ」と褒めそやされた。
余りのお上手にちょっと照れたが、そんな話に乗るつもりはまったくなかった。令と2人できっぱりと断った。



