『ロンリー・ローラ』のヒットは九州から関西へ、そして関東へと広がっていき、遂にテレビのベストテン番組からお呼びがかかるようになった。すると、初回だけでいいからと出演を依頼されたが、迷うことなく断った。プロのミュージシャンになる気はまったくなかったからだ。それでも彼らが出演する番組は可能な限り見ていた。しかし、ツアー・ギタリストがギターフレーズをコピーして演奏する姿を見ると、なんかとても変な気分になった。

 デビュー曲のヒットは別の面で大きな変化をもたらした。印税だ。作詞と作曲、そして、ギターの演奏に関する印税だった。信じられない額がスナッチ名義の銀行口座に振り込まれた。知らない人の通帳を見るような、不思議な感じだった。大金が貯まっていったが、印税には一切手をつけなかった。急に金持ちになると人格が変わるという話を聞いたことがあるからだ。そうはなりたくなかった。だから、派手な生活を戒めた。

        *

 ラジオ局やレコード店への販促活動に忙殺される日が続き、あっという間に年末になった。正月休みを利用して帰省しようと考えていた時、『ロンリー・ローラ』の次の曲のオファーが来た。今の路線で、しかし、もう少しインパクトのある曲を求められていた。

 同じ路線で、もっとインパクトのある曲、

 そのオファーが帰省を思い止まらせた。正月休みを返上して曲作りに励んだ。哀愁のあるマイナー調のフォークロックで、『ロンリー・ローラ』よりも、もっとロックっぽいサウンドを目指した。1月3日に完成した。

        ♪  ♪

『言葉はいらない』    作詞作曲:スナッチ

 消えては浮かぶさざ波のように
 揺れる心に押し寄せる涙
 あなたはいない(誰も知らない悲しい恋の)

 始まりだけが胸に焼きついて
 終わった時は幻の中さ
 思い出だけの はかない恋に

  傷つきながらも ただ僕の腕は
  あなたを求めて さまよい続けてた
  なんにも見えない道を 手さぐりで歩きながら


 昨日の夢にあなたはいたけど
 今夜の夢は色の無い世界
 寂しさだけが(胸に溜まってあふれて落ちる)

 面影さえも少しずつ消えて
 二度とは来ないあなたとの日々は
 ため息だけの 女に似ている

  言葉はいらない ただ愛が欲しい
  なんにもいらない その手を差しのべて
  僕の胸にもう一度 その顔をうずめておくれ

 Want you my baby 寂しくて たまらない一人は
 涙ぐむ この目には 灰色の 空に
 消えていく 長い髪 消えていく あなたの
 その姿 僕はただ 追いかけて もう一度
 あの夢を あの日々を あの愛を 胸に
 この歌が 届くまで いつまでも 僕は
 歌い続けるよ ア~

        ♪  ♪

 『言葉はいらない』は、『ロンリー・ローラ』以上のヒットになった。ナンバーワンを獲得したのだ。ビフォー&アフターはベストテン番組の常連になり、〈破竹の勢い〉という言葉が週刊誌の見出しを飾った。バラ色の未来が約束されていると誰もが思った。しかし、