――僕は、このまま誰にも知られず消えると思っていた。

 目覚めた瞬間から、意思を持つことも許されなかったから。

 最後に触れた温もりは、もう遠い昔のこと。
 ホコリまみれの体と開かない口。
 感情は宿っていたのに、伝えることができない目。
 やがて僕は、心を置き去りにされ、冷たくなった。

 人生最後の日。夢や希望も失い、生きてる意味さえ消えた。
 もう終わりだと思った。――その時。

 温かい手が、僕に光をもたらしてくれた。
 もう二度と、触れられることがないと思っていたのに。

 後で知った。
 赤く充血した彼女の瞳に込められていた意味を。
 
 僕の頬に彼女の雫が染み込んだ。

 胸が痛み、瞳に初めて光が宿った。
 トンネルを抜けた先に、眩い輝きが待っていた。
 彼女が手を差し伸べてくれたあの日のように、僕は力になりたかった。
 
 だから、決心した。
 ――今度は、僕が光を与える番だ。