萌美と義母が宮廷を追放されてから、数ヶ月の月日が流れた。
　紗奈は、正妃として、聡の隣で、穏やかで幸せな日々を送っていた。
　お腹の子はすくすくと育ち、紗奈の巫女の力も、さらに強く、安定したものとなっていた。
　「紗奈、お前のおかげで、この国の未来は明るい」
　聡は、そう言って、紗奈のお腹を優しく撫でる。
　聡の病も、紗奈の清らかな光と、お腹の子の生命力によって、完全に癒えていた。
　聡の顔には、かつてのような病弱な面影はなく、皇帝としての威厳と、父親になる喜びが満ちていた。
　「聡様、この子が生まれてきたら、きっと、この国はもっと光に満ちた場所になりますわ」
　紗奈は、そう言って微笑んだ。
　そして、満月の夜、紗奈は無事に、聡の子を出産した。
　生まれた子は、透き通るような肌と、聡譲りの深い瞳を持ち、その体からは、眩いばかりの光が放たれていた。
　紗奈の「心の眼」には、その子の魂が、清らかで、美しい光を放っているのがはっきりと見えた。
　「……これが、私たちの世継ぎ……」
　聡は、生まれたばかりの子を抱き上げ、感無量といった表情で、静かに涙を流した。
　子の誕生は、宮廷中に大きな喜びをもたらした。
　高官たちは、子の放つ光に、この国の未来が安泰であることを確信し、深く頭を下げた。
　その後、紗奈は、正妃として、そして、巫女として、聡と共に国を治めるようになった。
　彼女の「心の眼」は、人々の心の声を聞き、国の問題の根源を突き止める力となっていた。
　そして、紗奈が放つ清らかな光は、国の隅々にまで届き、人々の心から、不安や憎しみを消し去っていった。
　萌美が去った後の宮廷は、清浄な空気に満ちていた。
　侍女たちは、皆、紗奈を心から慕い、彼女のために尽くした。
　岳は、二人の忠実な臣下として、武官長として国を守り続けた。
　物語は、紗奈が、満開の桜の下で、聡と生まれたばかりの子と共に、幸せそうに微笑んでいる場面で終わる。
　「紗奈、この国を、そして私たちを救ってくれて、ありがとう」
　聡は、そう言って、紗奈に優しく口づけした。
　紗奈は、その言葉に、静かに頷き、ただ、お腹の子と聡と共にいられる幸せを噛みしめていた。
　（わたくしは、もう、一人ではない。愛する人たちが、いつもそばにいてくれる）
　かつて、孤独だった黒衣の少女は、今、月光に輝く姫となり、愛する人たちと共に、この国に、光と安寧をもたらす存在となったのだった。
　完