君の声が溶ける、その前に

 帰宅後、シャワーの音を録り、カーテンを叩く雨音を録り、カメラのセルフタイマーを切る音を録った。

 ICレコーダーのメモリは残り六割だが気にならない。
 
 ベッドの上、スマホで《#00 Rain postcard》とファイル名を付け、放送部共有クラウドにアップロードする。

 すぐに「受信完了👍」と夕紀からスタンプ。
 
 耳鳴りがまた強まる。

 ベッドランプを消し、闇の中で目を閉じる。

 *ザ―――*が宇宙の恒久的なサウンドトラックに聞こえた。

 百日はきっと長くて、きっと短い。
 
 でも今日という一日が、私の世界を切り取った最初の一枚。
 
 音を失う未来に、色を残す方法はきっとある。
 
 残響メーター 98 %。
 

 次のシャッターまで、おやすみ。