神様のいうとおり!!

柊の番。
いつもは積極的で宝華に対抗心を燃やし、自分から手をあげ目立つことが多いのだが、今日は珍しく最後の方。
スタートのピストル音が鳴ると元気のない虚ろな目からキリッとした目に変わり颯爽と走る。
「唖唄真木、すごいじゃないか」
諏田が感心している。
柊はこの後のハードル走でも記録を残すが全然嬉しくなさそう。

昼休み。
クラスメイトたちは昼ご飯を食べながら「自分はこの神様の加護を与えられたのではないか」と憶測ながらも盛り上がっている。
「宝華〜売店の焼きそばパンなくなっちゃうよ」「うん……」
昼ご飯よりも柊が気になる。
「ごめん、ちょっと急用!」
「あらあら、うふふっ。行ってらっしゃい」
走り出す宝華に由良は手を振り見送る。

『腹が減ったぞ!』
「え〜我慢してよ神様でしょ!」
昼休みになるとすぐ教室を出て行っていってしまった柊を探したいのだが、肩に乗っていた禅が宝華の顔にぺちぺちとパンチ。
早く探さないと昼休みが終わっしまう。
『嫌なら力は貸さん!』
「貸してくれたことないじゃん」
『はよ、せぬか!』
うるさいので売店に寄り、焼きそばパン2つと禅が食後のデザートにいちご大福をおねだり。

どっか食べさせる所はないかと探し、校舎一階の奥にある人気のない物置き部屋にやってきた。
「あ」
「あ」
柊がいた。
「柊……」
「なんでこんな場所にいるんだよ!」
それはこっちのセリフである。
「私は禅がお腹空いたって言うから」
「は?それ神様なのかよ。ただのキツネじゃねぇかよ」
「か、神様だよ……たぶん」
禅をチラッとみるが神様らしい威厳は皆無で、宝華もちょっと疑っている。

グゥ~と柊のお腹の虫が鳴り、恥ずかしそうに俯く。
宝華は焼きそばパンを1個差し出す。
柊は最初こそ拒んでいたが空腹に勝てず受けとる。
『余の…余の…焼きそばパンが…』と禅はショックを受けていたがいちご大福を渡すと『美味である!』とパクパク満足そうに食べた。

「あのさ、どうしたの?昨日の儀式が終わってからだよね?珍しく遅刻もしてたし」
「……なんでもない」
『うむ、余の焼きそばパンを食った小僧は低級ながらも二柱の神の加護を与えられておるな』
焼きそばパンを根に持つ禅。
「そうなの?」
「なんだ?」
「禅が柊は二柱の神様の加護が与えられたって言ってる」
「げっ。このアホヅラのキツネ喋るのかよ!」
禅を指さすと禅は柊に噛みつく。
「いてええっ!!離せ〜!」
『誰がアホだ!余の焼きそばパン返せ愚か者めがっ!!』
しばらく柊と禅の攻防が続き、後で焼きそばパン買うからと言って機嫌を直した禅は落ち着く。
『焼きそばパン!焼きそばパン!絶対だぞ!』
「はいはい」
落ち着いたところで話を戻す。

「元気がないのはもしかして神様の加護が関係してる?」
「う!」
図星のようだ。
「なんの神様?」
宝華は柊ではなく禅の方を訪ねる。
『鹿と馬だな』
「へー鹿と馬ね」
「なっ!?おいチビ、聞こえないが余計なこと言っうな!」
掴みかかろうとする柊をサッと避ける禅。
『鹿と馬…反対にすると…』
ニヤッと笑う禅。
「反対?馬……鹿……あっ!」
宝華は察した。
「うわあああっ!やめれ馬鹿っ…あ!」
自滅し床に手をつき落ち込む。