鶴吉さんを押し倒し、大きな舌で鶴吉さんの顔をべろべろと舐めるソレに私たちはあんぐりと口を開いた。
体は山羊の毛皮を纏い、四肢は黒く蹄を持っていた。頭にはやや内側にカーブした鹿のような短い角がある。目は三つ、額に第三の目があり、顔つきは獣と言われれば獣、おじさんと言われればおじさんにも見えなくもない人間味のある顔だ。左の胴体にも同じ三つ目と角がある。
「ちょ……やめろって白沢さん!」
擽ったさに身をすくめゲラゲラ笑う鶴吉さん。
「ちょ、え、鶴吉さんそれって」
「俺の見間違いか? なんか俺にはとんでもなく強い妖に見えんだけど」
皆大混乱した様子でその妖を凝視する。
「話には聞いてたけどホントに使役したんだね、白沢」
凄いなぁとその妖を観察する聖仁さんのその一言に、私たちはあんぐりと口を開けて呆然と立ち尽くす。
白沢──古代中国より伝わる神獣、で人の言葉を話し非常に賢い生き物だと伝えられている。日本では妖の一種だ。
神獣と呼ばれるだけあってとんでもなく力の強い妖で、そもそも人里に降りてくることは何千年に一度あるかないかというレベルなので、神役諸法度にも遭遇した際の対処は記されていない。



