「前に薫先生に教えてもらったんです。それって管狐を使役するために使う小箱ですよね?」
基本妖は自我が強いため、私たちが意のままに操ることは不可能だ。しかし稀に、祓除されることを恐れて使役を持ち出したり、神職の力量に感服して自ら使役を望む場合がある。薫先生の管狐コンちゃんゴンちゃんは前者だったはずだ。
そしてその管狐を使役する時に使うのが、鶴吉さんが持っているあの小箱だ。
「そうなんだよ。俺も薫先生みたいな管狐がほしくてさ、冬休みに手伝ってもらったんだよ。で、ワンチャン他のも使役できんじゃねぇかと思って、ちょっと祝詞をいじってみたわけ」
小箱に顔を近づけ小声で祝詞を唱えた鶴吉さんは蓋を外した。ポンッと空気が弾ける軽快な音がして箱からぼわりと白煙が上がった。
ワッと声を上げた私たちはゲボゲボと咳き込みながら白煙を手で仰ぐ。
ゆっくりと煙が晴れていき、少しずつ形が見えてくる。白い体と黒い蹄を持っている。
管狐ってこんな姿だった……?
「いやー、こいつ使役するのに一週間もかかったわ。薫先生が手伝ってくれなかったら、俺今頃死んでたかも」
「もしその時が来たら、お前の体解剖させてくれ」
「縁起でもないこと言わないでくれます?」
軽口を叩き合う双子たち。次の瞬間、白煙の中から何かが飛び出し、鶴吉さんの「ウワァッ!」と慌てたような悲鳴が聞こえた。
何事かと慌てて両手で煙を仰ぐ。



