言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


「さて、じゃあ先生に迎門の面を借りて鬼脈(きみゃく)へ入ろうか」


はーい、と声を揃えた私たちは、アヒルの子供たちのごとく先を行く聖仁先生について歩く。

もう聖仁さんが先生にしか見えない。

一つしか年齢は変わらないはずなのに、なんだろうこの絶対的な安心感は。

車へ戻って先生の元を訪ねると「やっぱりお前たちが一番か」と先生が感心したように頷く。どうやらまだ他の班はここまでたどり着いていないらしい。


「ちなみに三年は六限まで実習だが、後輩たちは六限は通常授業だからな。それまでには見つけ出せよ」

「えー、あと二十分くらいしかねぇじゃん」


鶴吉さんが不服そうに声を上げる。


「お前たちならできるだろ。見つけ出せたら、来週一週間の清掃と朝拝(ちょうはい)を免除してやってもいいぞ」


その瞬間、先輩たちの目の色が変わった。纏っていた和やかな雰囲気が獲物を狙うハンターのそれに一変する。

朝拝と言うと平日は毎朝行われている全校集会のようなもので、学舎内の清掃が終わったあと三十分ほど行われる。朝イチで行われるため毎回眠気と格闘する時間になのだけれど、舟を漕げば目敏い神職さまたちによって罰則を頂戴することになるので耐えるしかなくなかなかの苦行だ。

これが免除されれば苦行から解放されるだけでなくいつもよりも一時間は長く眠ることができるので、私たちにとっては金一封、最上級のご褒美という訳だ。