三度同じ呪歌を奏上し、来光くんは胸の前で合わせていた手を耳元にそっと添えた。鳥の鳴き声と風が草を揺らす音だけが聞こえる。
しばらく黙っていた来光くんはぎゅっと眉根を寄せて「あれ? おかしいな……」と首を捻った。
「どうしたんだ? 来光」
「なんの音も聞こえないんだよね。この失せ物探しの呪歌って、成功してれば絶対に飛沫の音が聞こえるはずだよね?」
私が「聞こえるはずだよ」と頷くと、来光くんはいっそう難しい顔をして耳を済ませる。もう一度柏手を鳴らし、今度は声の調子を変えて奏上した。そして「やっぱり何も聞こえない」と肩を落とした。
発音が違うんじゃね?もっと声の調子をさ、と試行錯誤しながら何度か奏上を試みる。十回目も失敗したところでずっと黙って見守っていた聖仁さんが「はい、一旦そこまで」と手を打った。
「来光の呪歌奏上は本来なら成功しているし、お手本みたいに上手だったよ」
「でも効果は発揮されませんでした」
不安げな顔の来光くんにひとつ頷く。
「神隠しにあったってことは、瑞祥は妖に連れ去られてるんだよね?」
当たり前の質問に私たちは困惑しながら頷く。
本来なら妖に連れ去られたことが発覚してから「神隠し」と呼ばれるが、今回は神隠しの対応を学ぶ実習なので「妖に連れ去られている」のは大前提だ。



