「────ごめんね巫寿、家まで送ってもらっちゃって」


玄関前に立って申し訳なさそうに手を合わせた恵理ちゃん。

すっかり日が暮れるまで話し込んでしまった私たち。私の兄である祝寿(いこと)お兄ちゃんから『いい加減帰ってきなさい』という怒りのメッセージが届き慌てて店を出た。

お兄ちゃんからも『恵理ちゃんを家まで送ってから帰ってきなさい』と連絡があったし喋り足りなかったのでむしろ丁度良かった。

気にしないで、と目を細める。


「年末年始はまた巫女さんバイト?」

「うーん、どうだろう。今年は禄輪(ろくりん)さんからはまだ何も言われてないから、もしかしたらこっちで過ごすかも」

「ほんと!? じゃあ大晦日に結守神社で年越ししようよ!」


小さい頃からよく二人で夏祭りや初詣に訪ねていた氏神神社の名前を上げた恵理ちゃん。二人で大晦日にお参りに出かけるのは毎年の恒例行事だったのだけれど、去年は私が巫女助勤のアルバイトで忙しく一緒に過ごすことができなかった。


「大賛成! 恵理ちゃんと年越ししたい」

「やった! じゃあ明後日会う時に詳しく決めよう! 冬休み始まったらいっぱい遊ぼうね〜」


それじゃあまたね、と手を振りながら家の中へ駆け込んでいく恵理ちゃんを見送り、私も帰路に着いた。

今日は新月なのでいつもより空は暗く、雲間から鈍く光るオリオン座が見えた。それにしてもと目を細め、歩道脇に燻る暗紫の靄に眉根を寄せる。