「なに、軽い黄泉がえりの薬だ」

「よみがえり……黄泉がえり!?」

「バカ、でかい声出すな。捕まるだろ私が」


やっぱり捕まる案件じゃん!

指摘されて慌てて口を抑える。

黄泉がえりの薬────その名の通り黄泉から帰ってくるための薬。古来より中国の神話や日本の民話で度々登場する死者を蘇らせるための薬だ。

死者の復活は自然の断りに反するとして神役諸法度上で固く禁じられていたはずだ。


「な、何でそんなものを?」

「巫寿は押すなって書かれた赤いボタンを前にして押さずにいられるのか?」


とても真剣な表情で問いかけられた。

そんな"明らかに押したらまずそうなボタン"、私なら絶対に押さないけれど。


「何が起きるか見ずに死ぬより、見てから死にたくないか?」

「死ぬことは大前提なんですね……」

「例えだよ、例え」


ヒヒヒッとまるで悪に染った科学者のような笑い方をする。

この先輩にしてあの後輩あり、だ。


「じゃあお二人は休みの間、ずっと黄泉……"例の薬"を作ってたんですか?」

「ああ。まぁ今のクオリティじゃ仮死状態のやつを叩き起す程度の気つけ薬だ。あとちょっとで完成しそうなんだが、試す相手がいないんだよ」


はぁ、とため息を吐いた亀世さんはチラリと鶴吉さんに視線を送る。