「そんなに荒れているのか? 休みの間は引きこもってたから外のことは何一つ知らん」
そういえば、と少し前の薫先生とのやり取りを思い出した。
『亀世と鶴吉にも声かけたんだけど、"私も鶴吉もプライベートがとんでもなく忙しい"って一蹴されちゃったんだよねぇ』
かむくらの屯所での特別稽古にはこの二人も招かれたと聞いている。
二人も禄輪さんを英雄視しているのは他のみんなと同じだったし、てっきりどうしても外せない用事があるのだと思っていたけれど、亀世さんはお家に引きこもっていたみたいだ。
一体何をしていたんだろう?
「お二人は休みの間どう過ごしてたんですか? 薫先生が二人は"とんでもなく忙しい"って……」
「あー、かむくらの神職の特訓か何かがあったらしいな」
「俺はそっち行きたかったけど、亀世が研究手伝えって言うからさ」
研究?と聞き返すと、亀世さんの眼鏡の奥の瞳がぎらりと光った気がした。
「知りたいか?」
悪い気が充満している場所に足を踏み入れたような悪寒がしてたまらず両腕を摩る。
「そ、それって手を出したら捕まるとか、そういうものじゃないですよね?」
「おい、巫寿は私をなんだと思ってるんだ?」
好奇心と出来心で部の後輩である慶賀くんと爆発を起こし、調薬室を半壊させたことを忘れたのだろうか。



