荷物を預けた私たちは車に乗り込んだ。

車の中は帰省から戻る生徒たちの土産話で賑やかだ。

基本的にはどの生徒もギリギリまで休暇を謳歌するために始業祭の当日か前日の便の車に乗るので、直前の便はかなり混み合う。

だとしてもいつもより生徒が多い気がするのは気のせいだろうか?


「巫寿、こっち空いてるぞ」


素早く空いた席を見つけてくれた亀世さんに導かれ隅の席に腰を下ろした。


「ったく、他の学生どもはもう少し早めに帰寮しようとは思わないのか」

「ギリギリの便に乗ってるお前が言えた口かよ」

「そもそも学生課が"馬は使うな"なんて連絡を直前に寄越すからこんなことになるんだ」


顔を顰めて息を吐いた亀世さん。

馬は使うな?と繰り返した。


「三年は車じゃなくてご神馬に乗ってきてもいいルールだろ。今回は鬼脈が騒がしいから車で来いって連絡があったんだよ」


なるほど、3年生がいるから人が多いように感じたのか。確かに亀世さんや鶴吉さんは3年に上がってから一度も車で帰寮していなかった。

人が多い場所だと機嫌悪くなるんだよこいつ、と鶴吉さんが呆れた表情で頬杖を付いた。


黒狐(こっこ)族が捕まったとはいえ、鬼脈や幽世の妖たちは気が立ってるみたいだからな。冬休み中に俺がおつかいで訪ねた時も殺伐としてたし、変に揉め事を起こさないための措置だろうよ」


幽世の各所で連日発生した戦の影響で、いま鬼脈の治安はかなり揺らいでいると聞いた。不安が広がれば世が乱れるのは幽世でも現世でも同じなのだろう。