世間の正月休みが数週間前に終わり、社も年末年始の繁忙期がようやく落ち着きを見せ始めた頃。凍てつくような寒さがほんの少し和らいで、神修から新学期の案内と迎門の面が届いた。
「お、巫寿。久しぶり」
車へ荷物を積み込むための待機列に並んでいると肩を叩かれた。
振り返れば細いメガネが良く似合う黒髪美女が長いポニーテールの髪をサッと払って「よ」っと軽く手をあげた。
「亀世さん、お久しぶりです!」
おう、と目を細めた彼女飛鳥馬亀世さんは、聖仁さん達と同級生の三年生だ。
「大変そうだな荷物。おい鶴吉、持て」
亀世さんは隣で別の生徒と談笑していた男子生徒の耳を容赦なく引っ張る。耳を引っ張られたその人はいてぇ!と悲鳴をあげて二三歩よろめいた。
「ノールックで引っ張るのやめようか亀世? あと普通聞くなら"持ってあげたら?"だからな」
亀世さんと瓜二つな端麗な顔を歪めたのは飛鳥馬鶴吉さん、彼もまた三年生で亀世さんの双子のお兄さんだ。
私の鞄をひょいと持ち上げた彼は既に二個分の荷物を担いでいる。
「えっ、大丈夫ですよ! もうすぐ積めますし、自分で持ちます」
「いいよ、二個も三個も変わらねぇから」
それなりに重いはずの鞄を軽々と肩に担ぐ。
礼を言えば、「お前も見習え」と亀世さんのおしりを軽く蹴飛ばし十倍返しの報復を受けていた。



