「あいつのこと助けてやれなかった俺も悪い、でも。やっぱり俺らを裏切ったあいつを、俺は許せねぇと思う。分かんねぇよ、もう」
私たちの中で一番正義感が強いのは泰紀くんだ。
三馬鹿と呼ばれるくらい悪ふざけは大好きだけれど、誰かを傷つけるような間違ったことはこれまで一度だってしなかった。
そんな泰紀くんだからこそ、きっと親友を許したい気持ちと間違ったことを許せない気持ちでずっと悩んでいたんだろう。
「焦らなくていい。今できることを精一杯すれば、自ずと答えは見えてくる。俺がそうだったから」
「超人聖人サイヤ人な聖仁さんでも悩むことがあるのか……?」
久しぶりにその枕詞を聞いた気がする。
苦笑いを浮かべている聖仁さんが安易の想像できた。
「サイヤ人って……そりゃ悩むよ。悩んで後悔してばっかりの毎日で、でもその瞬間がどれだけ苦しくても、何故かいつかその日を振り返った時に"そんなこともあったなぁ"って笑えるんだよね。だから何を選んだって、きっと君らも来年頃は皆で笑ってるはずだよ」
本当にそんな日が戻ってくるんだろうか。
皆で馬鹿して叱られて罰則を食らう日が、机を並べて勉強する日が、学校を走り回って行事ではしゃいで、肩を並べて笑い合える日が返ってくるんだろうか。



