「何ともない顔して俺らを騙して、命の危険にまで晒して────ふざけんよッ! バカ野郎クソ野郎ッ! 最悪最低のゴミクズ野郎だよ慶賀はッ!」


激しく空気が震え、優しくも芯のある声で聖仁さんが窘めるように名前を呼んだ。


「だってあいつは友達を、仲間を、親友を裏切ったんだぞ!? 許されるわけないだろッ! ああ、そうだよ許せねぇよ! 何よりも一番許せねぇのは────俺自身だよ」


弱々しく震えたその言葉。喉の奥を摘まれたような痛みにきつく目を閉じ奥歯を噛み締める。


「様子が変なのは気付いてたんだ。でもあいつ"何でもねぇ"って笑ってさ、"最近忙しいからちょっと疲れてんのかも"って言ったんだ。だからそうなのかってなんにも疑わずに納得して、そのうち調子戻すだろって思ってた。あいつ……本当はずっと苦しんでたのに」


慶賀くんの様子が変だったのは私も気が付いていた。

慶賀くんが一番楽しみにしていた奉納祭もずっと心ここに在らずで、皆で旅館に泊まった時も一番はしゃぎそうな慶賀くんがずっとなにか思い詰めたような顔をしていた。

今思えば、私に「妹を助けてくれ」って言ったのも勇気を振り絞って打ち明けてくれたSOSのひとつだったんだ。

気付けるタイミングは沢山あった。話を聞く時間も沢山あった。なのに私たちは全部それを見逃して、大切な仲間を失った。


一番許せないのは私たち、私自身だ。