聖仁さんは私よりも慶賀くんと付き合いがある昔からの知り合いだから、間違いなくショックを受けているはずだ。それなのに真っ先に私たちのことを気遣ってくれるその強さが心強くて、優しさが胸に染みる。
瑞祥さんが私の頭に手を伸ばすと自分の肩にそっと預けさせた。華奢だけど頼りになる肩だ。目を閉じてすり寄る。桃みたいな甘い匂い。体の力が抜けてほっとする。
聖仁さんも瑞祥さんも、私たちとたった一歳しか違わないのにどうしてこんなに格好いいんだろう。
当分は追い越せないどころか追い付けないだろうなぁ、なんて考える。
「────あいつとはさ」
口を開いたのは泰紀くんだった。
「あいつとは、慶賀とは初等部に入る前からの付き合いなんだ。だからもう十年くらい友達やってんだよ」
呟くような声は広い風呂場によく響いた。
たしかに来光くんや嘉正くんと比べると、二人はとりわけ仲がよかった。そんなに小さい頃から友達だったんだ。
「それこそなんでも知ってんだよ。あいつのエロ本の隠し場所も、好きなアニメ嫌いな悔いもん、何で笑って何で怒るのか。慶賀だって俺のこと、同じぐらい知ってる。隠しごとするような間柄じゃねぇもん。何でも話してきたんだよ、ホントに全部」
うん、と聖仁さんは静かに相槌を打つ。
「なのにさ、あいつ一番話さなきゃいけねぇこと、ずっと黙ってやがったんだよ。隠して偽って、俺らを騙したんだよ」
声に籠った熱から激しい怒りが伝わってくる。



