濡れた体のまま遊んだせいですっかり冷えきった私たちは、もう一度お湯を溜め倒して今度こそゆっくりと肩まで浸かる。

なんか最後にどっと疲れたんだけど、と浴槽にもたれ掛かり深く息を吐く瑞祥さん。

そりゃあれだけ暴れれば疲れますよ、とは言わずに苦笑い。


「でも良かったよ、みんなが元気そうで。心配してたんだ」


聖仁さんの少し落ち着いた声が男湯から聞こえた。

その言葉の真意は間違いなく学期末にあったことを指している。

聞いたんですか?と瑞祥さん小声で尋ねれば、少し戸惑うように目を泳がせたあと小さく頷く。

あの後すぐに箝口令がしかれて私たちの間ですらその話題を持ち出すことは固く禁じられた。もちろん先輩達にも話していない。

おそらく今回薫先生がかむくらの出仕として二人を招集するにあたり、避けては通れない話題だったから予め事情を話したのだろう。


昨日皆が屯所へ来た時、薫先生は私たちを見て「ほぼ全員」と言った。その言葉が今もずっと刺さっている。本来ならここには慶賀くんがいたはずだ。


「泰紀はお家の社のこともあるし、無理してない?」


みんなやっぱりどこか気落ちした様子だったけど、一番空元気だったのは慶賀くんと一番仲がよかった泰紀くんだった。

あえて話題には触れずにただ泰紀くんのことを心配する言葉に、聖仁さんの優しさが見える。