"かむくらの出仕"
そんな大層な名前を賜って浮かれていた私達は、次の日から始まった特訓ですぐに地獄を見ることになった。
「せ、千江さんごめん。手が震えて箸が持てないからスプーンくれ」
「うぷッ……僕夕飯はいいや」
「瑞祥、口からこぼれてる。汚いってば」
「そういう聖仁もさっきから豆ご飯の豆落としまくってんぞ……」
初日だし今日はこの辺で勘弁してやるか、と解散の合図が出たのは19時頃だった。その場で気絶した者数名を無理やり叩き起し、なんとか食卓について今に至る。
初日で手を抜いてもらってこの調子じゃ、明日から私たち一体どうなるんだろう。しかも私なんて午前中は誉さまと授力の稽古だったからみんなの半分しか動いていないわけだ。本当にシャレにならない。
今のうちに食べれるだけ食べておこう、と無理やりきんぴらを詰め込んだ。
特訓の内容はかなり多岐に渡る。
これまで神修で習ってきたような清め祓いの祝詞だけでなく、相手を攻撃し滅することが可能な祝詞、身を守る結界の役目を果たす祝詞に仲間を助ける癒しの祝詞。祝詞だけでなく御札やものを使った呪術、体術の稽古もあった。
この2年間を通して少しは成長したと思っていたけれど、神職さまたちの知識の深さと自分の知らないことの多さに、いかに自分が知った気でいたのかを思い知らされた。



