どうやら同じ学校の同級生に何かあったらしい。
大人しい子だったのにね。でもそういう子ほど闇を秘めてない? ちょっと不思議ちゃんではあったし。そうそう、小学生の頃は幽霊が見えるとか言ってたみたいで。
そんな会話が聞こえてきて、恵理ちゃんは不安げに瞳を揺らし私を見る。
「あれ」というのはだった今隣の席の女の子たちも話題にあげていた"連続神隠し事件"の話だろう。
こちらでは夏の終わり頃から行方不明者が急増している。決まった地域の住人が失踪するという訳ではなく、全国各地で急に人が消える事件が立て続けに発生している。
ニュースでも連日取り上げられており、失踪者の痕跡や足取りが一切出てこないことから誰かが「神隠しだ」と囁き、一連の騒動は「連続神隠し事件」として話題になっている。
ただの失踪事件ならまだしも、失踪時に不可解な点が多いことや"神隠し"と称されたことで、その話題は"私たち"の元にも届いている。
恵理ちゃんの予想通り、神隠し事件は「こちら側」と関係があるのは間違いないだろう。ただ"私たち"は外部で発生した神隠し事件よりも、先日内部で発生した問題の対応に追われており、そちらまで手が回っていないのが現状だ。
そしてどれもこれも固く箝口令が敷かれるほどの重大事案なので、やはり恵理ちゃんには何も話すことができない。
「あのさ、一つだけ教えて。巫寿や泰紀や他の皆は、大丈夫なんだよね? 危ない目にあったり、重大なことに巻き込まれてたりしないよね?」
何かを感じとったのか、恵理ちゃんは真剣な顔で私の目を覗き込む。私たちを心配する気持ちが痛いほど伝わってくる。



