「もちろん私たちも可能な限り巫寿らを守ろう。それでも私たちの目が届かない場面は必ずある。その時に私たちが駆け付けるまでの時間を稼ぎ、逃げる隙を作り、相手と戦うための力を身につけるんだ」


服の上から首から提げた小さい巾着袋を握りしめた。

まだこの世界のことを知って間もない頃、初めて禄輪さんから教えてもらった祝詞「略拝詞(りゃくはいし)」が書かれた紙を、眞奉が繕ってくれたお手玉サイズの巾着に入れた物だ。

あの日からずっとお守り代わりに首から下げている。

これを貰った時も同じことを言われたのを思い出した。


いつまでも誰かに守ってもらう弱いままの自分ではいられないことは、この二年間で十分に分かった。

自分を守ることは、誰かを守ることに繋がる。

きゅっと唇を結び顔を上げる。もう何からも目を逸らさない。


「分かりました。お願いします」


私の決意の籠った返事に禄輪さんは少し表情を和らげる。


「"たち"と仰いましたが、俺も含まれているということですね」


恵衣くんの冷静な質問に、禄輪さんは深く頷いた。


「ああ。芽のこれまでの行動パターンからして、お前たち諸共狙われる可能性が非常に高いからな」

「明日から俺含めかむくらの神職たちが交互に稽古をつける段取りになってるんだ。いい機会だからみっちりしごかれなよ。ちなみにおっさん共は俺よりも鬼だからね。あはは」