薫先生は以前私たちに、神々廻芽は自分にとってとても大切な人だったのだと話してくれた。あの嬉々先生ですら彼を親友だと思っていた。
こうなる前の彼がどんな人物だったのか、なんとなく想像できる。
「そもそも神々廻芽はどうして空亡側についたんですか」
恵衣くんの質問に対して禄輪さんはため息をついて首を振った。薫先生も肩を竦めて苦笑いを浮かべる。
「それについてはワシが答えよう」
黙って話を聞いていた玉じいがゆっくりと口を開く。
「こうなってしまったのはすべて、本庁が優秀な少年の未来に期待し、少女の稀有な力に頼りきってしまったからだ」
それが神々廻芽と志ようさんを指していることはすぐに分かった。
生まれた瞬間から言祝ぎのみを持って生まれた、間違いなく優秀な神職になることが約束された神々廻芽。未来を見通す"先見の明"を持ち審神者になった志ようさん。
きっと周囲からの期待は私が想像するよりも大きかったことだろう。
「神々廻芽は中等部の頃から本庁入りの打診があるほど優秀な学生だった。持ち前の力を過信する訳でもなく勤勉だったと聞く。我々はそんな彼を大切に育ててゆくつもりだった」
なるほど、つまり神々廻芽は今の恵衣くんみたいな立場だったわけか。



