禄輪さんは私や私を取り巻く現状を簡単にまとめて説明してくれた。

約13年前に空亡が突如として現れ始まった先の戦において、神々廻芽は日本神社本庁を壊滅させるために空亡の残穢を利用して本町庁舎を襲わせた。

13年経って神々廻芽がまた動き出した理由は、去年の2学期末に彼が神修を襲撃した際に判明しており、今でも彼は本庁の壊滅を目論んでいる。

最終目的は本庁の壊滅で間違いないようだけれど、彼の目的の中の一つには私を消すことも含まれている。

これまでに起きた一連の出来事は私を狙った結果発生した事件で、ただなぜ神々廻芽が私を殺したいのかという部分だけがまだはっきりしていない。


「巫寿は先の戦の終結後、兄の祝寿(いこと)と共にこの世界から離れています。だから神々廻芽と接点があるとすれば、この世界と関わりがあった三歳まで。……正直、当時の芽が三歳の少女に殺意を抱くような人間だと思えんのです」


眉根を寄せた禄輪さんは視線を落とす。

神々廻芽と禄輪さんの関係性は知らないけれど、薫先生と師弟関係だったということはきっとそれなりに交流はあったのだろう。

知っているからこそ信じられない、そんな気持ちが伝わってくる。神々廻芽は一体どんな人物だったんだろう。


「どうか分かんないよ。あいつ平気な顔して猫を殺した前科あるし。しかもそれを俺のせいにしたからね。言祝ぎの兄が実は腹黒って笑える、あはは」


口ではそう言いつつ、とても傷付いた顔をしていることに薫先生は気付いているのだろうか。