先に中へ入った恵衣くんの背中が緊張で少し強ばったのが分かった。続いて中へ入り納得する。会議室で待っていたのは玉じいと誉さんだった。


「禄輪のおっさん、腹減ったから饅頭取ってきていい? 長くなるでしょ」

「お前はもう少し緊張感を持て」


額を抑えた禄輪さんに思わずプッと吹き出す。

薫先生は相変わらずだし、なんなら禄輪さんが傍にいればいつもよりも無邪気さが増す気がする。以前この二人は師弟関係だと聞いた。気心知れた仲だから気も緩むのだろう。

上座に賓客の二人、下座に学生組の私たち、間に大人二人が座ったところで、禄輪さんが口を開く。


「巫寿と恵衣に集まってもらったのは、他でもなくこれからの話をするためだ」


これからの話、と繰り返すと禄輪さんは神妙な面持ちでひとつ頷いた。


「禄輪、誉にも分かるように現状を整理してくれ」

「はい」


立ち上がった禄輪さんはホワイトボードの前に立つ。さらさらとペンを動かす禄輪さんよりも、別のことに気を取られた私は玉じいと誉さんを凝視する。


玉じい今、誉さんのこと呼び捨てで呼んだよね……?


今はいち神職関係者とはいえ、彼女は元審神者だ。他の神職さまたちがひれ伏して挨拶するほど今でも重要な人物である事には変わりない。

そんな誉さんを呼び捨てするだなんて、一体二人はどういう関係だったの?


「巫寿、聞いてるか?」

「あっ、はい!」


禄輪さんに呼び戻されて我に返る。

いけない、大事な話し合いの途中なんだから後にしなきゃ。