前に泰紀くんが、恵理ちゃんは言霊の力はないけれど言祝ぎが強いと話していた。恵理ちゃんに励まされてあっという間に元気になれるのはそれも関係しているのだろう。
「ありがとう。じゃあ今ちょっと元気がないから、お願いしようかな」
そう笑って肩をすくめると「おっ!」と恵理ちゃんは瞳を輝かせて身を乗り出す。
「褒めまくりヨイショコース、喝入れ熱血コース、寄り添い抱きしめコースのどれがいい?」
「コース選べるの?」
追加でオプションも付けれますよ〜、とどこかの店員さんさながらな言い回しにぷっと吹き出す。それにしても、と恵理ちゃんが少し眉間に皺を寄せて声を潜める。
「最近物騒な事件が多いじゃん? だから顔見れて安心した。やっぱりあれって巫寿たちの世界と関係して────」
隣のテーブルに座っていた女子高生三人組のうちの一人が「うわっ、マジか!」と声を上げ、恵理ちゃんの声が掻き消される。
驚いて振り返るけれど、女子高生三人組はそれどころではないらしく顔を寄せあって己のスマホを突き出す。
「友達からいま連絡あったんだけど、シオリちゃんのお母さんが今日捜索願を出したんだって!」
「マジ? シオリちゃんって吹部の子だよね?」
「私クラスの子から家出って聞いてたんだけど」



