そうか、薫先生の後輩……。
禄輪さんの隣に座る薫先生に目を向ける。何か余計なことを言ったのか禄輪さんからげんこつを頂戴している。
薫先生を基準にするのが良くないのかもしれない、と少し反省だ。
「景福巫女頭はどうして今回かむくらの神職に加わったんですか?」
話題のひとつとして何気なくそう尋ねる。
しっかり者で正義感の強い人だからきっと世のため人のために加わったのだろうな、なんてぼんやり推測する。
景福巫女頭はほんの一瞬表情を緩めるといつものキリリとした顔で「復讐です」と端的に答えた。
そうか復讐か。やっぱり復讐だよなぁ。
「復讐……!?」
素っ頓狂な声で繰り返すと景福巫女頭は「ええ」とそれはそれは大真面目に頷く。
「大切な人が……恩師がいました。彼は先の戦で殉職しています。とても……とても良くしてもらったんです。だから、彼の敵を取るために加わりました」
その恩師のことを思い出しているのだろうか、景福巫女頭はぼんやりと机の木目をみつめて僅かに笑みを浮かべた。
その表情だけでも景福巫女頭にとってその恩師がどれだけ大切な人だったのかがよく分かる。どれほど強い想いを抱いてかむくらの神職に加わったのかも。
そうか、そうだよね。正義感だけで戦える人達なんてきっとひと握りの人間だ。みんな何か大切な理由があって、その大切な何かのために立ち上がる。
私が勇気を出せた時だって、いつも誰かのために何かをしたい時だった。



