「馬鹿、誉さまの前で何言ってるんだ!」

「俺の前ならいいのか禄輪」

「た、玉嘉さまそれは……」


からかわれ慌てふためく禄輪さんの姿は新鮮だった。いつも私たちの前に立ち凛とした背中を見せる禄輪さんとは正反対だけれど、なんだかちょっと安心する。

耳を赤くした禄輪さんは騒ぐ神職さまたちを睨むとひとつ咳払いをして背筋を伸ばした。


「とにかく、本題に入る前に旧友たちを偲ぶ時間を設けたい。 共に戦い、私たちを守り散っていった仲間たちに敬意を表し、黙祷を捧げよう」


賑やかだった広間が水を打ったように静まり返った。皆、その一瞬で真剣な眼差しに変わる。

黙祷、その声を合図に皆が静かに目を閉じた。


ここに集まった人達の約半数が、先の戦でもかむくらの神職として戦った人達だ。つまり皆、大切な仲間を失っている。

お父さんとお母さんの顔を心の中で思い浮かべる。


お父さんとお母さんが命をかけて守ってくれた仲間たちが、こうしてまた集ったよ。皆ね、すごく優しい顔をしてお母さん達のことを話すの。二人はたくさんの人たちから、愛されていたんだね。


ゆっくりと目を開く。前に座る神職さまたちの顔つきがほんの少しだけ優しくなった。



「────では、始めよう」



その一言で広間の空気が一瞬にして引き締まった。