喉を摘まれるような感覚に一瞬上手く息が出来なくて、変な間が空いてしまう。敏感にそれを感じとった恵理ちゃんは「話したくなかったら無理に言わなくていいよ」と顔の前で手を振る。
「泰紀が急に元気がなくなって、でも私には何も話してくれなかったからずっと気になってたの。同じタイミングで巫寿も何か落ち込んでるみたいだったから……」
恵理ちゃんは去年の夏に夏祭りへ一緒に遊びに行ったことがきっかけで私のクラスメイトである泰紀くんに一目惚れをし、約一年の片思いを経て今年の夏頃から付き合い始めた。
こまめに連絡は取り合っていただろうし、だとしたら泰紀くんの変化にもすぐ気づくだろう。
ここ数週間、みんなひどく落ち込んでいた。私だってそうだ。けれど誰よりも辛そうだったのは、一番仲の良かった泰紀くんだった。
「ちょっと色々あって。詳しくは話せないんだけど本当に……悲しいことが」
両手で包み込む紙コップのふちを見つめる。
悲しいこと、という一言では片付けられないほど私たちの中に深い影を落としたあの日を思い出し唇をすぼめた。
恵理ちゃんが手を伸ばし、私の手の甲にそっと触れる。
「そっか。話せないのは仕方ないけど、辛くなったら言ってね。励ますことは得意だから!」
きっと気になるはずなのに、私を気遣い自慢げにトンと胸を叩く恵理ちゃん。昔からこの底抜けの明るさと思いやりに何度も励まされてきた。



