「並べ並べ!」と急かす声が聞こえて、置物は諦めることにした。誰かが指摘したら私が置いたことは黙っていよう。
出遅れてしまって、玄関先は神職様たちでぎゅうぎゅうになっていた。皆背筋を正してその場に星座をしたので私も真似て腰を下ろす。
背は高い方ではないので、残念ながら神職さまたちの後頭部で何も見えない。
ザワザワしていた空気が次第に落ち着いていき、まるで神事が始まる直前のような静粛さに包まれる。
その時、玄関扉の前で雪駄が擦れる音がして扉に二人分の影がさす。
ガラリと扉が開いた瞬間、神職さまたちは一斉に深々と頭を下げた。
ひとり出遅れた私だけが顔を上げている状態になり、慌てて頭を下げようとし入ってきた人物たちと目が合った。
そこに立っていた意外な人物達に目を丸くする。
「────玉じいに、誉さん?」
現れたのは実家があるアパートの下の階に住む仲良しのおじいさんで実は前日本神社本町本部長である津々楽玉嘉さんと、三代前の審神者である泉井誉さんだった。



