お花を習っていたわけではないのだけれど、簡単にアレンジも加えて飾った水仙を見せると、千江さんから「飾り付け係」に任命された。

使用予定の大広間と共有スペースにお花を飾ったり、お母さんの小物を借りて賓客が宿泊するという部屋を飾る。

忙しそうな禄輪さんから「とりあえず華やかに、女性が喜びそうな感じで」という曖昧な指示を受けてそれ通りにやってみたものの、これで合っているのだろうか。

賓客の正体を確かめる機会を逃してしまったけれど、女性であることは間違いないので多分大丈夫だろう。

お母さんのたんすの中に梅の木が書かれた手ぬぐいがあったので、倉庫から埃をかぶった掛け軸棒を拝借し飾ってみると心做しか部屋が明るくなった気がした。


集合時間が近付くと続々と人が増えはじめた。

挨拶をしたことがある人もいれば、初めて会った人もいる。忙しいはずなのに禄輪さんはその度に私を呼び付けて紹介した。

神職の皆さんは全く同じ反応をした。最初は驚いた顔をして、その次に嬉しそうな顔をして、最後は「泉寿にそっくりだ」と懐かしそうに目を細めた。


そうこうしているうちに集合時間の五分前になって、「到着されるぞ!」と禄輪さんが叫びながら廊下を駆け抜けて行った。

急げ急げ、と神職さまたちが廊下を駆け抜けていく。


全員でお出迎えしなきゃ行けないほど重要な人が来るんだろうか?


倉庫に転がっていた誰かが掘ったであろう木彫りの謎の生命体の置物を、ちょっとした遊び心からテーブルの上に置いてしまったのだけれど今から片付けに戻った方がいいのだろうか。