言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


皆が私を巫寿と呼ぶ。私には巫寿という呪いがかけられている。私が巫寿である以上、定められた運命からは逃げられない。

私が逃げればまた皆が傷付く。逃げなくても今のままじゃまた皆が傷付く。

私を守ってくれて、私を仲間だと認めてくれて、私を可愛がってくれて、私を育ててくれた人たちが。

そんなのは嫌だ。絶対に嫌だ。

もうこれ以上大切な人たちを失うなんて、私には耐えられない。みんなを守りたい。みんなが大好きだから。


だから私はもう神修にはいられない。

今夜私は、ここを発つ。


先のことは何一つ分からない。でも、私がしなければならないことはただ一つ。

私が、空亡を討つ。


薫先生に頭を下げて寮を目指して歩き出す。ゆっくりと歩いた。

社頭、社、庭園に校舎。もうきっと二度と戻ってくることのない大好きな景色を一つ一つ記憶に刻んでいく。たった二年だった、けれどみんなと過した、何よりも大切で大好きな場所だ。

分厚い雲がゆっくりと風に流されて、満月が顔を出した。まるで、長いあいだ目を閉じていた世界がようやく息をするように。

深い闇を月明かりが照らす。これならきっと、暗闇の中でも歩き続けることが出来るはずだ。

ハラハラと白い雪が降り始めた。今年最後の雪だろうか。

月明かりに照らされて、まるで桜が舞い散っているようにとても美しい景色だった。







【続く】